国土交通省中部地方整備局は将来の担い手不足が懸念される建設業の職場環境改善に向け「検査時提出書類の簡素化」を進めている。2015年度下期から、全国に先駆け「検査時の受注者の負担を軽減するモデル工事」の試行を開始した。また、9月9日付で土木工事書類作成提出要領を改訂するとともに、企画部の技術検査官が中心となって結成した「工事書類減らし隊」が事務所の完成検査に臨場するなど、「余分な工事書類をつくらない・つくらせない」取り組みを徹底している。(写真:従来では250㎝に及ぶ書類を90㎝まで削減)
直轄工事における完成検査時の持ち込み書類は、受注者が工事関係書類で定められた以外の参考資料を作成したり、全項目にインデックスを貼り、項目ごとの仕切りにカラー用紙を使うといったケースがあり、6億円程度の工事で横幅にして約4.1mの量があった。
中部整備局では、こうした不要な参考資料の提出や過剰な装飾をやめるとともに、紙と電子の二重提出の防止を図ることで、持ち込み書類の量を約2mまで減らした。
しかし、「依然として工事書類の量が多い」との声が受注者から寄せられているため、さらなる提出書類の削減に向けて、9-12月に完成予定の工事で検査時の受注者の負担を軽減するモデル工事を試行する。本局発注工事4件と各事務所1件程度の計20件程度が対象となる見通しだ。
モデル工事では、定められた以上の書類や写真の作成を求めないといった「監督・検査・成績評定の手引き」の留意事項を徹底する。
試行工事の完成検査 |
加えて、安全管理関係の書類、産業廃棄物の処理のマニフェストなど、発注者の主任監督員が施工中に確認した書類は検査時に提出を求めないことで、技術検査官による重複確認を廃止する。施工プロセスのチェック結果は工事評定に反映する。
こうした取り組みにより、同局は検査時の持ち込み書類量をさらに1m減らせると見込んでいる。
9月25日には、名古屋市港区の名古屋国道事務所名古屋国道維持第三出張所で、モデル工事の初弾となる「平成26年度1号一色電線共同溝工事」(施工者=中部土木)の完成検査を実施した。
同工事では、従来なら横幅で約250cmに及ぶ完成検査時の持ち込み書類の量を約90cmにまで削減した。
対象となったのは名古屋国道事務所の発注工事だったが、検査には工事書類減らし隊の技術検査官が立ち会い、検査の実施方法や工事評価について助言するとともに、施工者らに書類削減の効果について意見を聴取した。
同局は、今後も試行工事ごとに受注者、主任監督員、技術検査官にアンケートを行い、有効性や改善点を分析し、16年度の本格実施に向けた対応策を検討する方針だ。
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