ことし4月に地域限定の支社社員から全国対応の総合職へ。「所長になりたいという気持ちがあり、総合職にランクアップした」と明かし、「いずれは地域のランドマークとなるような建築物をつくりたい」と意気込む。
建設業界を選んだきっかけは、高校生時代のアルバイトだったという。「母親が防水工事の会社で営業をしていたため、その縁で現場にアルバイトとして従事した。掃除など単純な仕事だったが、とにかく楽しかった」と振り返る。その経験から大学では建築学科を専攻した。
「現場で施工に携わりたい」という思いから、新卒採用で建設会社を数社受けたが、「当時は現場で働く女性がほとんどいなかったため、願いを受け入れてもらえず、設計関連の会社に就職した」。それでも現場への思いが断ち切れず、現場で働くことを条件に派遣会社へ。最初の派遣先が西松建設の現場で、その後も同社の現場を担当し続け、支社採用での入社に至った。
念願がかない、現場で働き始めたものの、「当初は『すぐ辞めるでしょ』という雰囲気で、職人も言うことを聞いてくれなかった」。ただ、持ち前の明るさと負けん気、そして何よりも仕事ぶりで「言うことを聞かない職人に対しても、一歩も引かなかった」と笑顔を見せる。現在は、協力会社の社長、職長、職人らと顔なじみとなり、職人を指名できるほどコミュニケーションが取れるようになった。
建築の魅力は「施主に引き渡した瞬間の達成感」であり、「1つの仕事が完結することがものづくりの醍醐味(だいごみ)で、充実感が得られる」と胸を張る。
生産年齢人口が減少していく中、政府の後押しもあり、建設業でも女性の活躍できる職場づくりが進められているが、「昔は(女性にとって)狭き門で、後押ししてくれる人もいなかった」。この世界で生きていけると思ったのは「入社して5、6年たってから」とも。
「最初の2、3年は使い物にならず、クビになると思っていたが、次第に職人が声を掛けてくれるようになり、現場の所長や先輩が相談に乗ってくれるようになった。現在は会社が女性の働きやすい職場づくりに取り組んでおり、職人たちも当時に比べて優しくなった」という。
建設業を志す女性に向けたメッセージを求めると、「覚悟を決めて入ってきてほしい。定年まで勤め上げるという気持ちが必要で、その覚悟がないと、この仕事はできない。迷っているくらいならやめた方がよい」ときっぱり。その言葉に現場で実直に働いてきた女性技術者の誇りを見た。
福岡県生まれ、大分県育ち。40歳。
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