2015/10/13

【鬼怒川堤防復旧工事】“見られている”現場、プレッシャーを力に 2週間の大突貫工事


 関東・東北豪雨に伴う鬼怒川堤防決壊の応急復旧工事では、2週間での完了を目標に9月10日の決壊から9時間後に工事に着手した。24時間体制で作業を進め、仮堤防の設置、護岸・鋼矢板による補強工を実施し、同24日夜に完了した。この大突貫工事の現地対策本部長(当時)を務めた関東地方整備局河川部の堤盛良水理水文分析官を始め、施工を指揮した鹿島の半澤光洋氏、大成建設の八浪悌朗氏らが8日、さいたま新都心合同庁舎で開かれた応急復旧工事などに対する感謝状贈呈式の後、工事の経過などを報告した。

 堤水理水文分析官は「2週間という目標だけでなく、本格着手したその日のうちに根固めブロックの投入も目標とした。まず地域に安心してもらう取り組みが重要だと考えた」と施工企業と打ち合わせしながら、仮設工から仮堤防へと迅速に工事を進めた経緯を語った。その上で、地元と大手建設企業の力、現場に携わった全作業員の集中力、比較的天候に恵まれた点を2週間の短期完了のポイントに挙げた。

八浪悌朗氏(大成建設)

 下流側を担当した大成建設の八浪氏は、苦労した点として、多くの資材を搬入するためのアクセスの確保を挙げた。民地を通すための対応に腐心した結果、「資材搬入の進入路を確保できたことが、短期間で完了できた要因の1つと考えている」と述べた。協力会社(倉友会)の頑張り、支店などによる図面おこしなどの協力を得て作業が進んだとし、「地元の方からの温かい声や協力が一番大きかった」と振り返った。

半澤光洋氏(鹿島)

 上流側を担当した鹿島の半澤氏は「非常に時間がないプレッシャーの中で工事は始まった」と仮堤防工事の段階に焦点を当てた。復旧着手に伴う報道やヘリコプターが現場上空を飛ぶ状況から「被災者、国民の皆さんに見られている現場だという意識を強く持った。その“目”を意識して仕事をしようと、『誰が見ても(進捗が)分かる状態をつくれ』と号令を出した。プレッシャーがむしろ個々の力を増幅させる糧となった」と振り返った。チームワークの力も挙げ、「使命感を持って働く者の誉れと、終わってみて安堵(あんど)している」と感慨を込めた。

右から堤盛良水理水文分析官、高橋伸輔河川調査官、戸倉道路情報審理官(関東地整)

 両社のほか、応急復旧工事に携わった新光建設、赤塚土木興業、新みらいの工事担当者らが経過などを語った。最後に整備局河川部の高橋伸輔河川調査官が災害発生後の同局の取り組みを総括した。
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