2015/07/26

【沖電気】遠隔管理でトイレ50%節水実現! 用途広がる「920MHz帯マルチホップ無線」

沖電気工業の開発した920メガヘルツ無線マルチホップネットワーク技術が、多方面で活用され始めた。現在使われている2.4ギガヘルツ帯や429メガヘルツ帯の無線に比べて電波の到達範囲が広かったり、別の無線との干渉や誤接続のないセキュリティー体制が構築できるなどのメリットが評価されている。工場内の電力やガス、水道の使用量計測や設備の故障監視、空調や照明の遠隔制御、農業、インフラの保全・点検など多岐にわたる分野での活用の可能性が広がっている。既にオフィスではトイレの利用状況などを管理するサービスに技術が採用され、従前の使用水量をほぼ半減する節水効果を発揮するなど、実績も積み上がっている。

 トイレへの導入は、トイレの節水サービス事業などを展開している木村技研(本社・東京都世田谷区、木村朝映社長)とNTTファシリティーズが共同開発した遠隔トイレ管理システム「AQUA-Remoni」に、同社の技術を組み合わせたものだ。システムは、トイレごとのバルブから情報収集と遠隔制御を実施し、洗浄水量のデータ管理による光熱水費の削減や異常検知の通知などにつなげている。情報収集と制御をクラウドサーバーから行うIoT(モノのインターネット)の技術が導入されている。
 複数あるトイレの情報を統合してネットワーク管理する際、有線でのサービスでは複雑になり、レイアウトの変更にも対応しきれない課題があった。そこで、同社の技術が生きた。920メガヘルツ帯は、無線LANなどに使われる2.4ギガヘルツ帯に比べて電波の到達距離が長く、障害物があっても電波が回り込んで届く特長がある。従来から利用されていた429メガヘルツ帯ではデータ伝送量が小さいという課題があり、それを一定のレベルで解決もできる。いわば現状ある電波帯の課題を一度に解消している。さらに、親機と子機での通信の中で障害が発生しても別の子機を介して通信を続けるマルチホップネットワーク技術も生かされ、障害に強いネットワークが構築された。

実証のため、昨年9月には同社の拠点である東京都港区のOKIビジネスセンターと、埼玉県蕨市のOKIシステムセンターに、AQUA-Remoniに920メガヘルツ帯マルチホップ無線を組み込んだサービスを先行して導入した。7階建てのOKIシステムセンターでは920メガヘルツの特長が生き、429メガヘルツや2.4ギガヘルツでは成功しなかった、1階から7階までの縦方向への電波の到達も実現している。ビルのオフィススペースでレイアウトの変更をしたものの、マルチホップネットワークの技術により、データの収集や機器の制御には障害が発生しなかった。本来の目的である節水効果も達成し、導入以前と50%の節水を実現している。
 今回のシステムでは、バルブに取り付けているシステムに無線ユニットをつなげ、データ管理や制御を実施している。産業機械などに通信モジュールを組み込むことで、有線通信の無線化やネットワークの構築が可能になる。また、配線工事が不要になるほか、配線が難しい場所での通信も実現させる点もメリットで、同社はこうした点をアピールして多様な分野と連携し、活用を進める考えだ。
 既に外部からの引き合いもあるのに加え、同社からの提案も含めて事業を拡大させる。その具体例としては、空調機器や照明などに導入することで、機器の故障監視や定期点検の省力化、障害時の迅速なサポートにも生かせる。既設の空調機器を新たに遠隔監視する場合に有線配線の工事コストの削減が実現できたり、複数の空調システムの監視を容易にする。飲食チェーンでは、店舗内の電力使用量や温度を本部で一元監視することができ、店舗の環境を均一に設定したり、節電効果を高める効果もある。
 同社の川西素春通信システム事業本部スマートコミュニケーション事業部マーケティング部シニアスペシャリストは「光ケーブルに伝送の正確性などで劣る部分もあり、導入はこれまで無線が使われていなかった分野での利用が多い」と、発展途上にあることを説明する。一方で、今後多くの実績を積み上げて信頼性を向上させることで、より幅広い活用につながっていくことに期待を寄せた。
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