大阪は演芸のまち。なんばグランド花月や国立文楽劇場、天満天神繁昌亭など、大小多くの演芸場が器となって都市の文化を支えている。
大阪松竹座(大阪市中央区道頓堀1-9-19)は、ネオルネッサンス様式の華麗な外観ながら伝統芸能、新劇、コンサートといった幅広い興行を打っており、そのミスマッチ感が面白い。本格的な能舞台を持つ登録有形文化財の山本能楽堂(徳井町1-3-6)では、能だけでなく浪曲や講談などの公演を催している。体験型のイベントを開催するなど積極的に活動しており、伝統芸能の魅力を現代に受け継いでいる。
現代に受け継ぐといえば、日本万国博覧会の会場となった万博記念公園(大阪府吹田市)の周辺が近年にぎわいを取り戻し、70年万博のエネルギーを受け継いでいる。万博終了後、会場跡地は緑地となり太陽の塔が記憶をつないできたが、昨年、大型商業施設やサッカー場が完成し、活況を呈している。記念公園の中心に鎮座する国立民族学博物館=写真=がいまもアクティブに活動していることが、この地区に魅力を引き寄せる大きなマグネットになっている。
施設の設計は黒川紀章。創設者である民族学者・文化人類学者の梅棹忠夫が未来学者の一面も持ち、未来都市のあり方を追い求めた黒川の考えと共感し合える部分があって、彼の作品の中でもよくこなれた後世に残る作品になっている。
博物館といえば、大阪には住まいをテーマにした日本唯一の博物館である市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館、北区天神橋6-4-20)がある。大阪の都市居住の歴史を知ることができるだけでなく、谷直樹館長の研究拠点としても存在意義は高い。
大阪には優れた建築が多いが、その建築が地域文化の中でどのように使われているか、どのように根付いているか、大会を機にぜひ体験してほしい。
国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園10-1)
ロの字型40×40mの展示ユニットが有機的につながっている。74年の開館後も増殖(増築)を重ね、メタボリズムの思想に沿った成長を続けている。規模はSRC造地下1階地上4階建て塔屋3層延べ5万1235㎡。
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