2016/09/29

【オーサカ建築1】西日本初の超高層「旧大阪大林ビル」 JIA近畿支部支部長 井上久実氏


 江戸時代の町屋から最先端の超高層ビルまで、多様な建築がひしめき合うまち、大阪。JIA建築家大会2016の開催を目前に控え、関西を代表する建築関係団体であり、友好団体でもあるJIA近畿支部、大阪府建築士会、大阪府建築士事務所協会、日本建築協会のトップに「全国に誇るオーサカ建築」をご推薦いただいた。4回にわたって掲載する。

 旧大阪大林ビル(大阪市中央区北浜東4-33)は、西日本初の超高層ビルとして1973年に完成した。2013年にダイビル本館に移転するまで、大林組本店(現大阪本店)の所在地として、また北浜界隈のシンボルとして親しまれてきた。いまは北浜NEXU BUILDと名前を変え現存しているが、空室が目立つと聞く。90年から98年にかけて建築設計部の一員として1日の大半をこのビルの中で過ごしてきた者として、寂しい気持ちでいっぱいだ。
 このビルは、当時アメリカ帰りの気鋭の若手設計者、藤縄正俊さんが中心となって設計された。黒い外観が印象的で、ダブルデッキエレベーターを関西で初めて採用している。米国シカゴのシアーズ・タワー(現ウィリス・タワー)によく似ていると建設当時から話題になったようだ。
 エレベーターを中心に南北対照のセンターコア形式のフロア構成となっており、日々働く人間でも、エレベーターを降りた途端に方向感覚を失ってしまうこともしばしば。外見は堅くても中身は柔らかい社風の大林組をよく表した建物だ、と面白おかしく比喩したものだ。ところで、中から見た中之島から梅田に広がる風景はすばらしく、日本三大祭の1つである天神祭の大花火を心行くまで堪能できたのを思い出す。
 大規模な改修が施された痕跡はなく、完成から40年以上が経過したいまでも古さを感じない。普遍的な建築理論のもと設計されている証だろう。だからこそ、ぜひ再生してほしい。

JIA近畿支部支部長 井上久実氏

 向かいには1926年完成の大林組旧本店ビル(*)がどっしり鎮座する。これもまた、当時の若手設計部員の情熱が目一杯に込められた作品である。
 新旧の大林ビルが向かい合って建っている風景は、大阪のまちづくりに貢献してきた大林組の誇り。JIA全国大会に来られる際にはぜひ観ていただきたい。

 *大林組旧本店ビル(大阪市中央区北浜東6-9)=現ルポンドシエルビル。本店ビルとしては4代目にあたる。設計は大林組(意匠設計・平松英彦、平面計画・小田島兵吉)。スクラッチタイルが印象的なスパニッシュスタイルの建物で、2008年には耐震補強と全面改修を実施。既存の窓の内側に耐震壁を設け、意匠性と機能性に配慮している。規模はRC造地下1階地上6階建て延べ5898㎡。
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