2013/10/17

【新国立競技場】コンペ見直しへJIAら建築家が2つのイベント

新国立競技場を考えるシンポジウム
「新国立競技場国際デザイン・コンクール」の問題を考えるイベントが10、11の2日連続で開催された。10日に開かれたのが日本建築家協会(JIA)建築家クラブ金曜の会が主催したトークイベント「ザッハの提案・新国立競技場をどう考えるか」。11日は、新国立競技場を考えるシンポジウム実行委員会(代表・元倉眞琴東京芸大教授)によるシンポジウム「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」が行われた。ともに、槇文彦氏がJIAの会誌『JIA MAGAZINE』8月号(295号)に投稿した論文「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」を受けて開かれたもので、国立競技場の建て替え計画・プログラムや社会システム・市民社会のあり方そのものに問題があることや、こうした問題を背景に行われたコンペも粗雑であり、結果の見直しが必要とされた。


◇実行委シンポジウム

 シンポジウム「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」は東京都新宿区の日本青年館で開かれ、会場ホール(定員350人)とモニター上映会場を合わせ700人が参加。また、U―STREAMでのライブ中継も行われた。
 元倉代表が、「特定の人間の責任を追及したり、対立の構造をはっきりさせて反対運動することが目的ではなく、槇氏が提起した問題について議論を深め、それを通してこれからの問題を前向きに解決するためのステージあることを理解してほしい」と趣旨を説明。JIA MAGAZIN編集長を務める古市徹雄千葉工大教授が進行役を務め、槇氏による論文の説明を受けて、陣内秀信氏が歴史的・文化的な視点、宮台真司氏が市民社会のあり方、大野英敏氏が都市計画の切り口で建て替え計画の問題を説明、解説した。
 槇氏は、神宮外苑の歴史的・文化的文脈の中で、今回の計画敷地に巨大な規模の施設を建設する合理的・客観的な理由が見当たらないことや、コンペの要求図書が外観パース1点のみである点、コンペへの参加者を限定した点、コンペは設計者ではなくデザイン監修者の選定となっているが、設計者との関係が不明な点などを上げ、「非常に粗雑なコンペだった」と指摘した。

◇JIA金曜の会トークイベント


「金曜の会」は、東京都渋谷区の日本建築家協会建築家会館1階大ホールで開かれ、JIA名誉会員の長島孝一、弁護士の吉岡和弘、前日本建築士会連合会会長でJIA会員でもある藤本昌也の3氏が話題を提供し、ディスカッションした。
 長島氏は、今回のコンペの背後には22のオリンピック施設があり、その背後には膨大な量の公共建築が存在し、さらにその背後には無数の建築があるとし、「新国立競技場のつくられ方は、建築全体にかかわる問題」と指摘。さらに、成熟した市民社会の中でよりよい建築・環境をつくっていくには、第三者性をもった専門家が裁量権をもって判断し、その判断が信頼され、担保される仕組みの必要性を唱え、英国のCABE(Commission for Architec & Building Environment)を紹介。日本版CABE「建築・まちづくり支援機構」の設立の必要性を訴えた。
 吉岡氏は、今回の計画案につて、(1)なぜ神宮なのか、なぜ晴海ではダメなのか(2)可動式屋根はどうやって動かすのか、その費用はいくらかかるのか(3)収用人数の8万人をどうさばくのか(4)オリンピック開催後にもこの規模は必要なのか(5)オリンピックのためだけに、超超法規を適用して建設するのか(6)国民の声を反映させた計画なのか--について分からないまま進められていることを問題視。
 コンペについても、「いつどこで誰がこういうコンペをすることにしたのか知らされていない。コンペの条件設定がよく分からない。いつ、誰が、どういう基準で選定委員を選定したのか分からない」ことなど不透明さを指摘した。
 藤本氏は、槇氏の問題提起に対し、「短期的には、建築界の中で、ワン・イシューで賛同する個人が集まり、グループをつくって代案を示すなどの運動にしていくべきだと思う。団体は内部に問題を抱えるかたちになり、明確な意思を示すのは難しい。一方、長期的には、建築や都市をつくっていく上での日本の仕組みを改善していかなればならない。そこでは、団体が協働してそのための基盤をつくればいい」との考えを示した。また、コンペに関する情報が少ないという声に対しては、「基本的に情報は開示されている。ただ、知りたいことがあっても、『ここからは言えませんよ』という形になっていることが問題」とした。
 会場からは、「スポーツ界など他の分野とも手を結ぶべき」という意見や、「手続き論を言うのであれば、コンペの要項が発表になった時点で問題を指摘すべきだったのではないか」「コンペは、個人が能力を最大限に発揮しなければならないもの。そのコンペの結果にケチを付けることは世界的に恥ずかしくないか。変な運動にはしてほしくない」などの指摘もあった。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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2 件のコメント :

  1. 環境倫理学的にも、社会学的にも、間違いであることがはっきりしたのですから、
    コンペの要項の時点で疑義を出せなかった問題とは切り離し、計画全体をここでしっかり止めなければならないと思います、ひとにとって建築とは何かにさかのぼって、一から考え直すことが必要だと信じます。

    いまなら間に合いますが、建ってからでは問題解決が不可能になり、人と街ををつなぐ一番大切なものがないがしろにされてしまうからです。(諦めだけが結果になりませんように。)

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  2. 環境倫理学的にも、社会学的にもまちがっていることがはっきりしたのですから、
    コンペ要項の発表時に疑義を申し立てなかった問題とは切り離し、
    テレビで流れているあのスーパーカー的デザインは一回ご破算にする事を決めるべきだとおもいます。いまなら間に合いますが、建ってしまってからではさまざまな問題の解決は不可能です。あきらめだけが結果となりませんように!

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