「これなら無線通話がとぎれてしまう心配はない」と、谷沢製作所(東京都中央区)の池田利夫営業部通信営業課技術営業担当マネージャーは力を込める。同社が開発した大型クレーン用の無線システムは、ブーム先端に無線中継器を置くという初の試み。「先行販売したユーザーからも好評を得ている」と自信満々だ。年間500セットを目標に販売を始めた。
これまではクレーンの操作室付近にアンテナを設置し、無線通話を行ってきた。建築プロジェクトの大型化が進み、建築物をまたぐような複雑なクレーン作業も増えている。現場では構造物などが障害になり、特に高層建築の現場では音声がとぎれてしまうケースが少なくない。
建設現場で使われる無線は免許が不要な特定小電力無線機が普及しており、電波の強さが制限されているために通信距離には限界がある。安定した通話環境を求める現場の声は「10年ぐらい前から出ていた」と池田氏は振り返る。ブーム先端に無線の中継器を置けば、通話障害をクリアできるが、これまでは電源を確保することが難しいと判断してきた。
中継器があれば遮へい空間でも通話できる |
きっかけはブーム先端にLED照明を取り付ける車両も出てくるようになったことだ。3年前から本格的に開発を始め、ようやく製品化にこぎ着けた。ただ、中継器の設置にはブーム先端からDC電源の供給を受ける必要があり、購入者にはメーカー側との協議が求められる。
池田氏は「新車購入前に、ぜひデモ機でシステムの効果を実感してほしい」と強調する。同社は依頼を受ければ、1日分のバッテリーが搭載されたデモ機を車両に取り付け、実体験してもらうキャンペーンを始めた。「遮へいがあっても問題ないレベルで通話できる」と先行販売したユーザーからの評価も上々だ。
システムの価格は99万1900円。オペレーター室用の設置コントローラー、ブームトップ中継器、子機2台で構成している。子機を増やすことにも応じるという。現在は油圧クレーン用の中継器を開発済み。ことし夏までにはクローラークレーン用も取りそろえる。国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)登録も完了した。
販売目標は年間500セットだが、ターゲットに置くのは大型クレーンだけではない。工場内の無線機システムとしても積極的に売り込む計画だ。保護帽メーカーとして知られる同社だが、通信関連の事業も30年以上の歴史をもつ。池田氏は「無線で困った時、常に相談される存在であり続けたい」と話す。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら
0 コメント :
コメントを投稿