2015/12/18

【記者座談会】新国立競技場整備の技術提案書公表 「A案」「B案」評価は?


A 新国立競技場整備事業の応募2グループの技術提案書が公表された。

B 企業名などを伏せたとはいえ、公募型プロポーザルの選定中に技術提案書を発表するのは極めて異例だ。日本スポーツ振興センター(JSC)は、公表に踏み切った理由について「前回の反省もあり、できるだけプロセスを透明化するようにした。出せる情報は積極的に出そうと考えた」と説明。一方で「官製談合防止の観点からの制約や選定の公正性、不正の排除」を挙げ、今回の公表方法は「こうした2つの前提が両立し得るギリギリの線」としている。
C 14日の会見で配布された資料は、両者が提出した60ページに及ぶ技術提案書そのもので、企業名などが特定できる部分は黒く塗りつぶされていた。「A案」「B案」の区別も口頭で説明し、技術提案書には一文字も加筆していない。恣意性の排除を理由に、あえて概要版も作らず提案内容についての回答も避けた。
B 記事を書く際に、技術提案書を読み解くのには苦労した。会見でも提案書の見方についての質問が目立った。両者の提案書は同じフォーマットで書かれていない。規模や構造、デザインなどで両案を比較するには、それぞれ書いてある個所を探し出さないといけなかった。
A ところで、当紙はA案の延べ床面積を「19万4010㎡」と報じているが、一般紙や同業紙はすべて「19万2363㎡」となっていたけど。
B それは、A案の技術提案書に書いてある延べ床面積の数字に誤記があった。他紙はその数字を使って報じた。実は今回、提案者が提出した「正誤表」も合わせて配布されていた。その中に延べ床面積も訂正されていた。うちが報じたのが正しい数字だ。
A 設計界からの反応は。
D 以前から開かれた議論を要望していた日本建築家協会(JIA)は、今回の情報公開を高く評価している。芦原太郎会長も「国民のコンセンサス、透明性の確保という点で歓迎する」と話していた。「まさか、すべての資料が公開されるとは思わなかった」と驚いている建築家もいたほどだ。
A デザインについては。
E 新国立競技場見直しの発端が神宮外苑の景観論争だったせいか、外観には両案ともかなり配慮しているという声が多い。ただ、コストの問題があるのかもしれないが、いずれもドーナツ型で印象は似ている。客席配置、屋根架構、緑化、屋根の曲線といった細部の違いはあっても、軒高約50mの圧迫感を解消する列柱も似ており、デザイン的にインパクトのある差はない。
D A案は設計検討に多くの時間を費やしたところが、B案は施工会社3社JVによる動員力、それぞれの強みになっているとの声も聞かれた。
E 前回の計画はデザインやコストが問題視されたが、今回は評価項目で重視されている工期短縮やコスト縮減でも両者の提案に大きな差はなかったようだ。
D どちらにしても、設計・施工一貫方式という生産方式の第三者性をどう確保するかが問われることになる。建築生産方式としての有用性を占う試金石にもなる。
A 今後の予定は。
B 19日に開く技術提案等審査委員会で応募2グループにヒアリングを行い、優先交渉権者(事業者)を選定する。これを受けてJSCの理事長が決裁し、関係閣僚会議を経て正式決定となる。
C 関係閣僚会議後、22日の発表が有力だ。前回の白紙撤回を安倍首相、今回の技術提案書公表は遠藤利明五輪担当相が発表した。官邸主導を意識する中で、次は馳浩文科相が事業者を発表するのではないか。その後、JSCの会見となる流れが予想される。選定された事業者の同席もあり得る。
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