2017/01/29

【現場最前線】効率・合理的な設備と新技術で五輪需要に確実に応えていく JFEスチール東日本製鉄所京浜地区


 ウォーターフロント・京浜エリアの川崎と横浜両市にまたがる東京湾に浮かぶ約550万㎡の人工島・扇島。ここはJFEスチールの鉄づくりの拠点となる東日本製鉄所京浜地区の中心エリアとなっている。建築構造物の大型化などにより需要が増加しつつある厚板ハイテン材の製造プロセスにおいて、冷却温度制御を高精度化するなど積極的な環境投資を重ね、リーマン・ショック時の落ち込みを除いて直近約10年にわたり年間400万t規模の粗鋼生産量を維持している。

 日下修一専務執行役員東日本製鉄所京浜地区所長によると、「足元では国内自動車関連事業の堅調ぶりを背景に薄板のフル生産が続いており、建築などに使われる厚板の生産は90%とやや余力がある状況。五輪需要が本格的に出てくれば、体制変更も視野に入れながら(需要増に)確実に応えていく」と意気込む。
 京浜地区では、南北約2㎞、東西約3㎞に及ぶ扇島エリアに、原料岸壁、原料ヤードから製品岸壁にいたるまでを「シンプルかつ直線状に配置」(日下所長)することで、効率、合理的なレイアウトを採用。2015年の出荷実績によると、橋梁、建築、構造物などに使われる厚鋼板が37%、自動車や家電向けの熱延鋼板が35%と大半を占め、このほか半製品が9%、表面処理鋼板が8%、エネルギー輸送用鋼管などに使われる溶接管が6%と続く。
 最大20万t級の大型船が接岸できるAバースなど3つのバースで原料を受け入れ製銑、製鋼された後、連続鋳造のプロセスを経てスラブとなった鋼片は、約1㎞にわたる厚板圧延工場に移される。同工場ではスラブを奥行き約40mの連続式加熱炉で加熱した後、国内最大級の圧延機により顧客の要望に応じて世界最大幅5300mmまでの鋼板を製造する。生産能力は月産15万t、年間にすれば180万tに及び、全体の60%程度が陸送で出荷される。
 同地区の厚板ハイテン材の製造過程では、かつて圧延機と冷却設備が離れて設置され、鋼板を冷却する間に圧延機に空き時間が発生するという能率ロスがあったが、「圧延機と冷却設備をほぼ一体化して設置し、水冷と圧延を同期化させる新制御圧延技術『Super-CR』を導入。ハイテン材の圧延能率は従来に比べ約2割増と大幅に改善しただけでなく、所定の目標温度の的中精度が向上したことで、鋼板強度のばらつきも低減することができた」(日下所長)という。
 足元では原料炭の高騰が続く中、「価格の改定にも取り組んでいるが、(こうした)新技術を取り入れていくことでコスト削減につなげ、少しでも原料高騰分をペイできれば」としている。建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

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