通常の路面切断に使用している乾式路面切断技術をグルービング(安全溝)に応用することで、一般国道、高速道路などのスリップ事故を未然に防止する「乾式グルービング工法」。路面に溝を切り込む同工法は、すべり抵抗性のほか、寒冷地の路面凍結防止、粉塵の再利用など、さまざまな側面で効果を発揮している。日本乾式グルービング施工協会の佐藤高広副会長は「公共事業だけでなく、工場、ショッピングモールなどの駐車場、荷下ろし場などのすべり対策としてもニーズが増えている」とし、同工法の普及啓発を積極展開する考えだ。
2016年1月に起きた軽井沢スキーバス転落事故は、事故現場の手前800m付近でグルービング工事を実施。工事完了後に事故が発生したことから「事故現場付近でも工法を施していればと思うと胸が痛んだ」と振り返り、「事故が起こる前に先回りして安全対策を講じてほしい」と力を込める。
同工法は施工時に起きるブレードの摩擦熱の上昇を抑えるため、圧縮空気によりダイヤモンドブレードを冷却。施工中に出る切削切粉の排除は集塵装置でほぼ完全に袋詰めできる。特長として急なカーブや高速車線、雨天時の路面スリップ事故などに有効で、これまでの測定結果から、とくに薄雪状態の路面では一般路面と比べ、すべり抵抗性が約2.8倍確保できることも明らかになっている。
施工に当たっては、カーブ、斜面、横風を受けやすい直線道路、陸橋などに適している「縦型安全溝」と、走行時にタイヤから伝わる音と振動により、居眠り運転の防止や減速を促す警告の役割にもなる「横型安全溝」が基本パターンとなる。縦型はタイヤのグリップ力を高め、コーナーリング時の操縦を安定化するとともに、直線道路では横風への抵抗力を持たせ、スリップ事故を防止する。横型は交差点、横断歩道、料金所などの手前に施工した場合、車の制動距離を大きく短縮することができる。
空港の滑走路ではハイドロプレーン現象の抑制のため、走行方向に対して横溝を施工するパターンを採用しており、「一度施工した個所でも摩擦抵抗を確保し、安全運行の妨げにならないよう、再度、グルービングを実施するケースも出ている」と工法の信頼度を強調する。
現在は会員各社に法定福利費が内訳明示された標準見積もり書の活用を促し、成果を上げつつある。
◇日本乾式グルービング施工協会 群馬県高崎市上並榎町515-8。電話027-384-4151。
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