2017/01/07

【2017・変わる建設産業】高速道路会社 大規模更新に対応


 「花の新設、涙の保全」--。高度経済成長を機に交通基盤整備が急速に進む中で、土木技術者の間で、こうささやかれた時代が遠い昔となりつつある。社会資本インフラの代表格の1つである高速道路も新設から大規模更新という大きな転換期を迎えている。道路の安全・安心に対する関心・要求の高まり、大規模更新の的確な実施など、取り巻く状況に機動的かつ効率的に対応するため、高速道路各社は、新たな技術力の向上に向けた対策や大規模な組織改編などで本格的に到来する大規模更新や維持・修繕に対する準備を進めている。

◆東日本高速 体験・体感型研修施設新設
 東日本高速道路会社は、本格的な高速道路のメンテナンス時代到来に対応するため、2018年度の完成を目指して、埼玉県の東北自動車道・岩槻インターチェンジ(IC)敷地内に、体験型・体感型の技術者研修施設を新たに整備する。
 「維持管理業務を主体とした技術開発の推進と技術者の育成、技術力の向上を図ることが喫緊の課題」。廣瀬博社長は、技術者研修施設の整備の背景をこう説明。その上で、技術者育成の基本的な考え方について、「技術者の主たる成長機会は現場・職場での実践とOJT。また、実効性のあるOJTには、技術的な知識の理解と習得が必要」と指摘する。そのためには、「基礎研修が必要で、さらに将来的に減少する建設現場での経験も補完し、構造物の劣化メカニズムなどを深めるためには、体験型・体感型の研修が必要」とし、より実効性のある研修施設を整備する。また、同社グループが担う点検、調査、診断、雪氷対策などの維持管理業務に関する研究・技術開発にも活用し、料金管理業務における実機を使った研修も計画している。
 「体験・体感型の技術研修の必要性が日を追うごとに高まっている」(廣瀬社長)中で、ネクスコ東日本エンジニアリングが保有する点検・保守の実技面の技量向上に向け、教育・訓練の実施を目的とした研修施設「テクニカル・トレーニングセンター」(群馬県高崎市)とともに両施設を積極的に活用していく。

◆首都高速 過去最大の大幅な改革
 首都高速道路会社は、今後本格化する大規模更新などに向け、次代を見据えた過去最大規模の組織改編を15年度から段階的に進めている。15年3月に中央環状品川線が開通し、主なネットワークの概成などを機に、管理部門とプロジェクト部門との連携を強化するため、管理局と建設局を統合し、エリアを所掌する局体制に段階的に改編。また、大規模事業を着実に推進するため、本社の建設事業部を「プロジェクト部」に改組し、「構造設計室」を新設した。
 局体制の初弾として、15年7月に西東京管理局(管理)と東京建設局(建設・改築)を「東京西局」として統合し、「管理・プロジェクト部門」を新設。東京管理局を「東京東局」とし、神奈川建設局の建設部門を「プロジェクト部門」に改めた。
 20年以降には、神奈川建設局を「神奈川局」とし、東京西局、東京東局との3局体制にし、各局に「管理・プロジェクト部門」を備える。
 首都高速道路の大規模更新事業は、初弾の1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新事業が施工中で、17年度には第2弾の高速大師橋更新事業が着工を予定。さらに、20年の東京五輪後には第3弾の3号渋谷線(池尻~三軒茶屋)が控える。28年完成を目標に総額3775億円に及ぶ大規模更新事業が本格化する。3号渋谷線など計55㎞を対象とした大規模修繕も総事業費2487億円のプロジェクトで、26年度完了を目指して順次、具体化していく。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿