2017/01/23

【技術士会近畿】「金井塾」で技術士の自己研さんにつながる場を 技術士会近畿本部 河野千代氏


 インフラと人をつなぐ技術士に--。日本技術士会近畿本部が2016年度から始めた「金井塾」の取り組みが注目を集めている。大林組顧問の金井誠氏が講師を務める「受講者参加型」のセミナーで、目指すのは「現代版・技術の適塾」だ。金井塾の仕掛け人でもある同本部建設部会幹事長の河野千代氏に、その狙いなどを聞いた=写真。

 昨年10月に大阪市内で開かれた2回目の金井塾。「労働災害発生時の対応と事後対策を述べよ」「RC構造物のスペーサー選定の考え方は」「開削工事における中間杭省略の方法」など、現場の実情に即したテーマをもとに議論が交わされた。受講者全員に課題に対する回答が求められ、「なぜそう考えたか」を徹底的に問いかける金井氏。一方、時々言葉に詰まりながらも真正面から答えようとする受講者たち。会場は不思議な一体感に包まれていたという。
 「会員、非会員を問わず、すべての技術士の自己研さんにつながる場をつくりたい」と考えていた河野氏。金井氏は世界で初めて海水練りコンクリートの開発に成功するなど、土木技術の世界では広く知られた存在だ。自ら技術オタクを名乗り、25歳から35歳くらいまでの若手技術者を対象としたセミナーを主宰する氏の取り組みを知り「臆面もなく」アプローチをかけて、大阪での開催を実現させたと説明する。
 行動力と実行力には定評があるが、昔から土木に興味があったわけではない。普通科高校を卒業し就職。結婚・出産を経て復職した24歳の時に土木技術者を志した。子育てと主婦業のかたわら独学で資格取得に励み、44歳で技術士(鋼構造及びコンクリート)に合格した異色の経歴の持ち主だ。技術士会にもすぐに入会したが、自分と同世代の会員がほとんどいないことに驚かされた。「現役世代に価値を見いだしてもらえる活動を」と、河野氏が発案したのが金井塾の試みだった。
 まだ2回の開催ながら、参加者からは次回も参加したいという声がすぐに寄せられ、反響の大きさを実感したという。「自ら考え、どんな環境下でも持続可能な技術者を育てたい」と、江戸時代末期に数多くの人材を輩出した緒方洪庵の私塾になぞらえて「現代の適塾」を目指すと意気込む。受講生の声に応え、17年度からは回数を増やしていく考えだ。次回は4月22日、『トンネル』をテーマに開催する。
 「技術伝承の場としての技術士会を発信したい。業績について結果だけを話すのではなく、そこに潜む危険や失敗、配慮が必要なことなど、技術者ならではの感覚や思想も含め若手に伝えてほしい。現役を引退した会員にも技術者育成に一役買ってもらえたら」と先を見据える。

 (こうの・ちよ)2002年久本組入社。11年から同社企画支援室長。13年技術士建設部門(鋼構造及びコンクリート)登録、同年技術士会に入会した。和歌山県出身、47歳。
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