2017/01/07

【2017・変わる建設産業】ディベロッパー プロジェクトの事業大型化 迫られる生産性向上


 東京都心部では、大型の民間開発事業がめじろ押しだ。プロジェクト1件当たりの開発規模が大きくなったのも最近の傾向だが、その背景には国家戦略特区の都市再生事業を始めとした容積率の緩和トレンドがある。画像は臨海副都心有明北地区地区計画の外観イメージ

◆容積率の緩和トレンド
 一方、「小さなことのようにも見えるが、意外と効果が大きい」とディベロッパーの開発担当者らが口をそろえるのは、エレベーターシャフト部分を容積率に不算入できるようになった制度改正だ。これは、2014年7月施行の建築基準法施行令改正で導入された容積率制限の合理化策で、すべての建築物を対象にエレベーターシャフト部分の各階床面積を容積率にカウントせずに済むようになった。
 制度改正当時に設計中だったプロジェクトの中には、計画変更の確認申請などで対応したケースもある。もちろん、現在進行形の大型プロジェクトの多くはこの容積率合理化策の恩恵を受けている。

◆既存解体、設計、施工を一気通貫

 プロジェクトの大型化は、建設工事の労務ひっ迫にも拍車を掛ける。プロジェクトの効率化・生産性向上は、ディベロッパー、ゼネコン双方にとって大きな課題となる。このため最近の大型プロジェクトでは、ある傾向が顕著になってきた。
 ゼネコンが既存建物の解体工事から設計、施工までを一気通貫で担う動きだ。実際、大型プロジェクトの多くは解体工事専業者ではなく、ゼネコンが解体工事を行っている。もちろん、中には地下部分の解体工事が新築工事と密接な関係があるなど、特別な事情から解体工事をゼネコンが担うケースもある。他方、基本設計のみを設計事務所が担当し、実施設計以降をゼネコンで進めるプロジェクトもある。個別の事例は別として、なぜこうした一気通貫方式が主流になりつつあるのか。

◆フロントローディング

 その背景を端的に示すキーワードが、「フロントローディング」だ。各工程を川上に前倒しすることでプロジェクト全体を効率化する狙いがある。既存建物の解体工事と並行して設計を進め、設計段階では施工の合理化策を織り込むほか、資機材や労務の調達も前倒しして施工に備える。シビアな工期を克服し、施工効率化と生産性向上を実現するための創意工夫でもある。
 大型プロジェクトでは既にフロントローディングの取り組みが定着している。そこには、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及が大きく貢献している。そもそもBIMは、設計、施工に加えて維持管理までカバーできる。今後、維持管理段階でのBIM活用も拡大していきそうだ。
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