2017/01/08

【2017・変わる建設産業】コンサル 人材確保・育成へ働き方改革


 昨年の建設コンサルタント業界は、インフラメンテナンス、国土強靱化、防災・減災対策などといった施策を反映し、受注環境は一昨年に引き続き好調だった。経営環境が好調な中で、人材の確保・育成に向けて、ダイバーシティやワーク・ライフ・バランス(WLB)の推進など、働き方改革に取り組む企業も増えてきた。写真は日本工営の託児所「N-kids」。中央の扉で乳児と幼児を分けることもできるので安全だ

◆日本工営 事業所内託児所を開設
 業界最大手の日本工営は、東京都千代田区の九段オフィスに託児所「N-kids」を設置した。建設コンサルタント業界では初の事業所内託児所の開園として注目された。オープンに当たって、育児休業からの早期復帰や海外事業所、支店から本社地区に転勤になった場合の業務継続、一時利用による家庭環境の充実、WLBの向上といった効果を期待している。
 利用対象は、グループ従業員の小学校就学前までの乳幼児(生後3カ月から6歳まで)。保育園に入ることができるまでの定期利用のほか、1日単位の利用も可能だ。一時利用の場合は、都内への出張時、保育園の休園日、家庭保育者のリフレッシュなどに利用することができる。

◆パシフィックコンサルタンツ 理想の上司を育てる
 パシフィックコンサルタンツは、社員の技術・経験・感性・発想などの多様性を組織の強みとして生かしていく「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)経営」の取り組みを積極的に推し進めている。15年10月に策定した「D&I推進方針」は、『長期経営ビジョン2030』を支えるための土台と位置付けており、20年の目標値として、男性の育児休暇取得率15%、役職者の女性比率10%など12項目を設けている。
 また、NPO法人ファザーリング・ジャパン(安藤哲也代表理事)が運営する企業ネットワーク「イクボス企業同盟」に加盟した。イクボスとは、職場でともに働く部下、スタッフのWLBを考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことを指す。
 イクボス企業同盟は、イクボスの必要性を認識し、積極的に自社の管理職の意識改革を行って、新しい時代の理想の上司(イクボス)を育てていこうとする企業のネットワークだ。同社は、WLB、D&I経営のさらなる推進のために、イクボスを育成していく。
 また、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」企業に認定された。採用、継続就業、管理職比率、多様なキャリアコースの4項目を満たし、2段階目の認定を取得した。今後も最高位の3段階目を目指して取り組みを進めていく。男女の区別なく採用・育成・登用を行っており、女性が能力を発揮しながら継続的に活躍できる環境づくりを目指して、女性活躍推進支援に取り組んでいく。

◆建設技術研究所 女性活躍推進を目指す
 建設技術研究所は、ダイバーシティ推進室を設置。女性の活躍推進を目指すとともに、シニア層で生産に直結する仕事に携わっている者に対して、処遇を改善する制度改革を行った。
 また、建設コンサルタント業界で初めてイクボス企業同盟に加盟した。加盟を契機として、イクボス自らとイクボスの周囲の社員のWLBが実現するように、トップダウンで取り組みを進めていく。村田和夫社長は「繁忙期の体制がどうなるかが一番大事なところだ」と先を見据えている。

◆オリエンタルコンサルタンツ Smile-3S活動
 オリエンタルコンサルタンツは、「女性社員自らが成長し、会社がそれをサポートする」ことを目的に、「Smile-3S活動」を進めている。3つの「S」に込めた意味は、「支える(Support)」「共有・分かち合う(Share)」「定着し、活躍する(Success)」。
 具体的には、活動によって女性社員自らの定着と活躍を実現できるように会社が支援するほか、女性社員の定着と活躍を目指し、議論を重ねてきた「 女性社員の働き方検討ワーキンググループ(WG)」のメンバーが主体となるサポート部隊が、女性社員一人ひとりの相談窓口となり、仕事上の不安や悩みを共有し、分かち合える環境をつくっている。
 また、女性社員が主体的にキャリアビジョンを設定し、実現のために自己研さんすることで、成長や成果の達成を確認できるPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを構築していく。

◆国際航業 女性NW会議を設ける
 国際航業の●(土に点)方聡社長は、女性の活躍推進に向けて、「国が推奨する制度面についてはすべて網羅している。しかし、浸透していない部分もあるので、周知を兼ねてディスカッション、改善も行っている」と語る。同社は「女性ネットワーク会議」を設けており、意識・意見・提案を聞いて、施策に反映させていきたい考えだ。
 WLBの面では、6、8、10、12月の4カ月間を「働き方改革月間」に位置付けている。12月は特に厳しく、毎週水曜日は午後6時退社といった取り組みを徹底している。さらに「テレワークなどもこれから考えていかなければならない。情報収集を行っている」。地域専任職も昨年から導入した。「ダイバーシティの意識を強く持っているので、男女のこだわりをなくしていこうとしている」と男女を問わず、働きやすい職場環境の実現に意欲を示している。

◆応用地質 えるぼしマーク認定
 応用地質は、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」マークの2段階目の認定を受けた。採用、継続就業など5つの評価項目のうち4つに適合した。地質調査業界でえるぼしの認定を受けた企業は同社が初という。今後も最高位の3段階目を目指して取り組みを進めていく。
 同社は、労働時間対策、女性の積極採用、就労継続などを早くから推進してきた。昨年も同法に基づき、女性採用比率20%、女性事務系職員(基幹職)の採用を目標に積極的に取り組みを進めている。直近10年間の女性採用比率は約30%。引き続き積極採用を続ける一方で、働き方改革に取り組み、各種制度を整備しながら就労継続を支えていく方針だ。また、WLB推進の取り組みでは、全事業所から労使1人ずつ計24人を「WLB推進者」に任命し、17年3月末まで「WLBの視点を入れて働き方を変える」「制度トライアル案の検討と試行」の2点に基づき活動を進める。4月からはテレワーク・在宅勤務制度と、時間の繰り上げ就業を運用する予定だ。

◆基礎地盤コンサル 助言受けアイデア実行

 基礎地盤コンサルタンツは、親会社である長大の永冶泰司社長が建設コンサルタンツ協会の総務部会長を務めていることから、働き方改革について、アドバイスを受ける考えだ。
 岩崎公俊社長は「 長大がさまざまなアイデアを出し、実行のために施策や規定を変えていく。その中から当社にフィットするものをピックアップしていくことになる 」と語る。

◆日水コン 長時間労働を是正
 日水コンは、長時間労働是正に向けた施策として、昨年度に「統括課長制度」を導入した。組織の最小単位である課長レベルのマネジメント強化を目指したもので、職員の時間管理意識や生産性の向上を図っていく。職場環境づくりに向けては、職員と会社側が一体となって行っていくことが基本とし、労働組合と共同で「ワーク・ライフ・バランス推進協議会」を設置し、長時間労働の改善に向けたアクションプログラムの検討に入った。
 人材の育成は、職員研修制度を改革した。研修は新入社員、2・3年次研修、若手・中堅研修、課長・部長研修と幅広い世代・階層で実施している。これまでこれら研修は座学中心の受身型研修だったが、グループワークやディスカッション中心の参加型研修に改めた。研修を通じて各年代や各管理職で何を考え、何を身に付け、何をしていくのかなどの意識を深めるとともに、自己のアクションプログラムを作成してもらい、直属の管理職がレビューしていく仕組みを整えている。
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