2012/10/30

【技術】RCコアでS造躯体をつり下げる「津波対策ビル」 大成建設が開発



RCコアでS造トラスを吊り上げる


 大成建設は、津波から人も建物も守る津波対策ビル「T-Buffer」の提案に力を入れている。建物中央部に強固なコア(RC造)を配置し、その頂部から2階以上のトラス状構造体(S造)を吊り上げる。津波による1階部分の柱やガラスカーテンウオールなどの損壊をあえて許容。大型の漂流物が外壁などを壊して内部に流入した場合でも、衝突時に威力が減衰されているため、建物を支えるコアの損傷を防げる。非常時の緊急避難に特化し、用途が限定される津波避難ビルとは異なり、日常的に使用するオフィスや商業施設などに、空間計画の自由度を保ちながら避難機能を付加できる。 T-Bufferは、建物機能の早期復旧を可能にする技術として開発。守る部分と壊れてもいい部分を明確に区分した。津波の波圧や漂流物の衝突により、1階外周の柱が損傷しても、上階外周部に配置したベルトトラスと最上階の吊り材が、建物を支持する。守るべき2階以上の構造体を、損壊を許容する1階フロアと分離している形だ。基礎は杭基礎とし、洗掘に耐えられるようにマットスラブ形式とする。

守る部分と壊れてもいい部分を明確に区分
コア耐震壁の厚さは、想定する津波の大きさによって変わってくるが、4階建て事務所ビルを想定したモデルケースでは、600mmに設定した。コア部には、エレベーターや階段、トイレなどを配置する。建物利用者以外の地域住民も避難に利用することを見据え、コア外周部に階段を設けるというアイデアもある。屋上には避難、備蓄スペースなどを設ける。
 津波漂流物は、基本的に外壁などで食い止めるが、万が一破壊され、建物内部に流れ込んだとしても、外壁が緩衝材となって衝撃力を弱める上、コア自体も頑丈なため、建物が致命的な被害を受けることはない。コアを分散配置して設計の自由度を高めたり、通常パターンを1ユニットとしてとらえ、複数を組み合わせることで大型物件にも対応するなど、用途や規模に応じたアレンジも可能だ。
 コスト面については、一般的な建物に対し、構造にかかる費用を2割程度、全体で1割弱の追加投資で建設できるという。

建物外周をらせん状に登れるパターン
また、大成建設では、緊急避難用の「津波シェルター」も提案している。波圧を低減する円筒形状で、狭い敷地でも多くの人を収容できるよう、避難フロアを内部に積層化しているのが特徴だ。屋上へとつながる外部階段は、子どもや高齢者に配慮して勾配を緩くする。
 外周部に開口部を設けない閉鎖型の計画で、1階部分には備蓄倉庫を配置。近くに駐車場があるなど、漂流物対策が必要な場合には、周囲に防衝工を巡らす。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月30日3面





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1 件のコメント :

  1. 螺旋階段ですか。デザイン上では、かっこいいですね。

    非常時には、すごく危険なしろものになります。

    なぜなら、ドミノ倒しになってしまうからです。

    踊り場を装備した折り返い階段の方が安全です!

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