2013/10/29

【帝都復興】建築学会と土木学会が関東大震災後の施設保存提唱

日本建築学会と土木学会は26日、東京・芝の建築会館ホールで「関東大震災から90年-『帝都復興事業』再考」をテーマに合同シンポジウムを開いた=写真。田所辰之助日本大短期大学部教授は、帝都復興事業で建設された施設の解体が進んでいるため、早急な保存の必要性を訴え、今回のシンポジウムは「建築、土木のハードだけでなく、社会システムなどソフトの視点からもみることが新しい」と趣旨を説明した。

 第1部は研究報告で、都市・土木史研究所の伊東孝祐氏が「土木史から見た帝都復興事業と現在」と題し、土木学会帝都復興80周年関係史資料調査検討小委員会での研究内容を紹介した。対象施設は街路と河川運河で、街路のうち復興橋梁は都内の場合、架設位置が確認できたのが234 426橋、このうち現存は88橋、神奈川県内の復興橋梁は180橋、現存は35橋だった。
 伊東氏は、「土地区画整理事業で形づくられた街路網に大きな変化はない」が、街路樹や街灯、広場など「土木施設は8割近くが失われた」と説明、復興事業を後世にいかに伝えるかが今後の課題と強調した。
 山崎鯛介東工大准教授は、復興・復旧事業で建設された建物について発表した。東京市(当時)が復興・復旧事業で建設したRC造の施設は、築地の中央卸売市場が3件中1件現存、区役所庁舎は12件すべてが現存せず、市立小学校は117件中15件が現存などとした。
 山崎准教授は、「1980年ごろはまだ多くが現存していたが、現在はほとんどが失われている」と現状を示し、その理由として日常的な施設のため意義や歴史的な価値が理解されにくかったことを挙げた。今後は、「なぜ造られたかを明らかにして、建物の価値付けをしていく」必要性を訴えた。
 小林正泰東京学芸大特任講師は、教育史から見た復興小学校の歴史的意味を報告した。復興小学校は20年代に、社会変動と教育問題に対応しながら、地域の中心として機能するように計画されたと説明。文化財としてみれば「現在社会の基点となる転換期の教育思想を反映した教育文化財であり、地域の中心として建設された地域文化財として評価できる」と述べた。
 第2部は伊東孝日本大上席研究員などが話題提供。第3部は内田青蔵神奈川大教授の司会によりディスカッションした。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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2 件のコメント :

  1. 記事記載のデータが間違っています。
    架設位置が確認できた234橋・・・ではなく、426橋です。
    234橋は東京において撤去された橋の数です。

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  2. ご指摘の通りでした。訂正いたしました。ありがとうございます。
    (日刊建設通信新聞社)

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