2016/03/03

【現場最前線】FILM工法、3Dデータ化導入の「魅せる現場」 奈良県・大和御所道路新田東佐味トンネル


 鉄建は、奈良県御所市内で「大和御所道路新田東佐味トンネル工事」を施工している。目まぐるしく変化する地山や自然由来のヒ素対策など技術的難易度が高い現場で、さまざまな工夫を取り入れ、品質向上と安全を両立。品質向上に向けては、背面平滑型トンネルライニング工法(FILM工法)を同社の現場で初めて採用した=写真。2月20日現在で約440mを掘削し、全体の進捗率は約50%。11月末の完成を目指している。

 トンネルは、京奈和自動車道(長さ約120㎞)のうち、大和御所道路区間(同27.2㎞)の一部。長さ1831mのうち、1301mを同社が施工する。現場は最大土被り130m、最低土被り13mと起伏に富み、地山の変化も激しいため、支保パターンをこまめに変える必要がある。山岳トンネル現場は3件目という、同社の遠田喜一新田東佐味作業所長は、「地山の状況が目まぐるしく変わるので、掘削管理が一番難しい」と説明する。
 品質向上に向けては、道路トンネルでは導入事例が少ないFILM工法を採用。同工法は吹き付けコンクリートと防水シートの間に充填材を充填することで覆工コンクリート背面を滑らかなトンネル形状に仕上げる。覆工の巻き圧が均一になるため、覆工コンクリートの品質向上などにつながる。
 掘削ズリには部分によって自然由来のヒ素が含まれているため、現場ではさまざまな対策を講じている。雨水によるヒ素の漏えいを防ぐため、土砂ピットには屋根を張り、下部はコンクリートで覆っている。ズリは3つに区分されたピット内にいったん取り置き、土砂サンプルの検査結果を待ってから搬出する。

屋根付きの土砂ピット

 健全土とヒ素含有土をそれぞれ違う捨て場に運ばなければならないため、ズリを現場から搬出するまでにはサンプル検査とダンプの手配を含めて3日を費やす。健全土の場合は捨て場が近いため複数回往復できるが、含有土の場合は捨て場が遠く、最多でも3往復しかできない。このため、搬出に使うダンプは健全土の場合1日当たり13台で済むが、含有土は60台が必要になる。
 現場には、同社が開発したトンネル切羽の3次元データ化技術を試行的に導入して、データを蓄積している。遠田所長は「状況を立体的に見ることができ、蓄積したデータは後々のメンテナンスにも役立てることができる」と説明する。 

遠田喜一作業所長

 安全管理面では、「目立ってなんぼ」をテーマに、場内機械におのずと目が行くような照明を設置するなどの工夫を施している。また、「現場は見た目で決まる」(遠田所長)と、整理整頓を徹底し、これまで無事故・無災害を継続している。
 国土交通省近畿地方整備局が展開する「魅せる!現場」にも積極的に協力し、これまでに約20回、見学会を開いている。「月に2回くらいのペースで開催しているが、見られることで現場をきれいにする意識も高まっている。現場での働きぶりの理解にも役立つ」(同)とプラス効果も出ている。
 遠田所長は「『やるなら心に残る仕事を』をモットーに無事故・無災害を継続し、発注者が満足する高品質な成果物を引き渡したい」と気を引き締める。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿