2016/07/16

【現場最前線】進捗率8割! 安全・省力化で進む復興リーディング事業・国道45号摂待道路工事


 東日本大震災から5年3カ月が過ぎ、「復興・創生期間」という新たなステージを迎えた中、さまざまな復旧・復興事業が最盛期を迎えている。東北地方整備局が復興のリーディングプロジェクトに位置付けている三陸沿岸道路も、地域の期待に応えるべく、1日も早い完成に向けて急ピッチで整備が進められている。大規模工事がひしめく岩手県内の三沿道の中でも、象徴的な工事の1つである国道45号摂待道路工事(施工=大成建設・錢高組・東日本コンクリートJV・小原克己所長)の現場を訪ねた。写真は掘削が進む第2トンネル

 同工事の大きな特徴の1つが、直轄道路事業としては全国初となる公共生コンクリートプラントの設置・運営だ。1日当たり約500m3を製造し、自工事を含む11本のトンネル工事に供給している。2014年8月の稼働開始から現在までの生産量は、総生産予定量の約37.7%に当たる約5万6500m3に達しており、地域の復興事業に必要なコンクリートの需給バランスを阻害することなく、復興事業の円滑な推進を下支えしている。
 工事では、3421.5mの区間内において、摂待第1トンネル(長さ1355m)と同第2トンネル(同1772m)の2本のトンネル、長さ234mの摂待大橋上下部工を施工するほか、下摂待橋(長さ37m)の上下部工も追加となった。
 このうち宮古市側起点部に位置する第1トンネルは、15年9月に貫通しており、現在進められている覆工コンクリートの巻き立ては、既に1355mのうち774mに到達している。
 第2トンネルは、起点側と終点側(久慈市方面)の2工区で掘削を進めていたが、起点側は382mの掘削を終えて4月に終了。終点側はこれまでに1050mを掘削済みで、進捗率はあわせて80%を超えた。現在は、残る340mを終点側からの片押しで掘削している。順調にいけば10月にも貫通を迎える予定だ。
 トンネル工事では、切羽からの肌落ちによる災害を防止するため、ジャンボマンゲージにプロテクターを設置しているほか、ICタグを使用した接近監視装置で監視範囲内に入った作業員や車両、重機を色と音で識別できる「無線式重機接近監視装置」の設置、さらに重機の駐機時にクローラーの四隅にLED(発光ダイオード)照明を設置し駐機状態の「見える化」を図るなど、災害防止のための工夫が数多く施されている。

NOPキャリィ工法で施工されている摂待大橋の橋脚

 一方、両トンネルをつなぐ摂待大橋は、2つの橋台と橋脚の工事が進行中だ。橋台は、宮古側のA1橋台で谷側深礎杭の施工が完了し、山側深礎杭が施工中。久慈市側のA2橋台では仮設土留め杭の設置が進められている。
 橋脚はP1、P2ともに深礎の施工を終え、P1では11ロット中、最後のロットの鉄筋組み立て、P2では柱頭部の鉄筋とPCの組み立てが行われていた。
 鉄筋の組み立てに当たっては、作業の簡素化と安全を図るため、主筋以外の帯鉄筋、中間帯鉄筋、コーナー補強筋を6段分地組みし、大型クレーンで組み立て個所に一気に吊り込む「NOPキャリィ工法」を採用。また、型枠組み立ての効率化を図るため、「大型システム型枠」を導入し、省力化と工期短縮を実現するなど、橋梁工事においてもさまざまな創意工夫を取り込んでいる。
 施工上の取り組みに加えて、特筆すべきは積極的なCSR(企業の社会的責任)活動の展開だ。公共プラントの看板デザイン公募と稼働式でのデザイン披露、中学生のコンクリート体験学習、地域の運動会や祭りへの参加、地元ラジオ放送への出演、地元見学会の実施など、枚挙に暇がない。さらに、地域の中学生に「建設業の魅力」を伝えるキャリア教育も行っており、人材確保が大きな課題となっている中、建設産業をアピールする取り組みとして関係者から高く評価されている。
 安全・安心に留意し、省力化と工期短縮に取り組みながら進めてきた同工事の進捗率は全体で8割を超えた。小原所長は、10月をめどとする第2トンネルの実貫通時には、第1に続いて地元の子どもたちを招く考えで、こうした取り組みを含め、今後も地域に寄り添いながら、1日も早い完成に向けて最善を尽くす。 (進捗状況は6月22日現在)
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