2016/07/31

【i-Con】対応型工事ぞくぞく発注で、現場はどう変わる<上> 第1号の2現場をルポ


 国土交通省の直轄工事で、i-Construction(アイ・コンストラクション)施策に基づくICT(情報通信技術)活用の取り組みが動き出した。先行するICT土工では2016年度に400件を超える現場に適用する計画だ。初陣となったのは、北海道開発局の道央圏連絡道路千歳市泉郷改良工事(受注者・砂子組)と、北陸地方整備局の宮古弱小堤防対策工事(同・会津土建)の2現場。ICTは現場をどう変えようとしているか。写真はICTバックホウ

 会津土建は菅家洋一社長のリーダーシップの下、先行して情報化施工に取り組んできた。労働生産人口の減少、技術・技能者の高齢化など地域建設業が抱える課題への対応はもとより、「品質を確保していくことが何よりの目的だった」と宮井隆利技術管理部長は振り返る。ICT活用工事に真っ先に名乗りを上げたのも、これまで培ってきた経験を生かすためだけではなく、ものづくりの本質を追求し続ける姿勢の表れといえる。
 宮古弱小堤防対策工事では、ICT土工と従来土工を併用している。ICT土工の施工部は下流工区の長さ132m。既に9割程度まで進捗している。現場代理人の白岩雅夫氏は「UAV(無人航空機)による起工測量はトータルステーションと比べ、短い期間で済む。さらにICT建機の導入で掘削、整形時の丁張りが必要なくなり、工期短縮に加え、人材の有効活用にもつながっている」と明かす。精度的にも大きな差違は見られないという。

ICTブルドーザー

 また、マシンコントロール(MC)バックホウ(油圧ショベル)の使用により掘削手元作業員の配置が不要になるほか、モニターで埋設物が確認できることから「接触、損傷など事故の危険性が軽減された」と安全面での効果を加える。
 オペレーターを務める協力企業の森口隆好氏は「自動車で例えると、マニュアル車とオートマチック車ほどの違いがある」と高い操作性を実感する。
 監理技術者の小山泰正氏はICT化によって品質と生産性の向上が見込める一方、「災害を始めとする有事の応急復旧ではこれまでの測量方法や丁張りが求められるかもしれない。地域の守り手としての使命を今後も全うしていくにはそういった技術、段取りを若い人に伝えなければならない」と訴える。
 奇しくも、この現場には新入社員の白山つばさ氏が配置された。3月に地元高校を卒業したばかりだが、「ドローンの(起工)測量は1日で終わり、丁張りもいらないので、あっという間に工事が進んでいく」と、学校では習わなかったICT技術の効果に驚きを見せる。ただ、これから佳境に入る上流部の長さ123mでは従来工法の起工測量と丁張りを任される。先輩たちは「一人前の技術者になるためにも苦労は不可欠」(白岩氏)と、今後の成長に期待を寄せる。

左から小山氏、白岩氏、白山氏

 宮井部長はUAVによる出来形管理を残すものの、情報化施工からICT施工に移行してもスムーズに現場運営できていることに「わが社が進んできた道は間違っていなかった」と目を細める。
 同社は1つの工事でICT土工と従来土工を実施するという特徴を生かし、竣工後にICT活用のメリット、デメリットを検証する方針だ。白岩氏はその結果を生かし、「i-Conも(情報化施工と同様に)先導的に対応していきたい」と意気込む。
 発注者側からも期待の声が聞こえてくる。北陸整備局阿賀川河川事務所の見田弘幸副所長は「生産性革命元年の柱であるi-Conが本格化していく中、本工事での成果を共有し、他の現場で水平展開できるように発注者として鋭意努力していきたい」と先を見据える。
 会津土建と阿賀川河川事務所は連携しながら、地元高校生を対象とした現場見学会を開催するなど担い手の確保に向け、ものづくりの魅力や現場のICT化などを広く発信している。
 
■宮古弱小堤防対策工事
築堤は長さ約255mで、掘削工は1000m3、盛土工は2910m3、法覆工は2000㎡。工事場所は福島県会津坂下町宮古地先。工期は9月30日まで。
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