2016/07/24

【フジテック】女性技術者も活躍! 昇降機メンテに“セールスエンジニア”育成


 不特定多数の一般人が日々利用するだけに、よりハイレベルの安全・安心が求められるエレベーター・エスカレーター。製造や据え付け段階の品質はもとより、引き渡し後のアフターサービスも重要なのは論をまたない。フジテックは、定期的に顧客と対面で接し、昇降機の状態を誰よりも熟知しているメンテナンスエンジニアの育成に力を注いでいる。目指すのは診て、直すだけでなくコミュニケーション能力に長け、説得力のあるリニューアル提案などもできる“フィールドセールスエンジニア”だ。写真はエレベーターの閉じ込め救出。手動で「かご」を巻き上げる

 大阪府茨木市にある同社の人材開発拠点「ビッグフィット」。ここには、これまでに製造・販売してきた歴代の実機が置かれ、入社間もないエンジニアでも、古い製品の保守作業などをOJT(職場内訓練)感覚で身に着けることができる。かつては本当のOJTだけで人材育成を行ってきたが、現在は経験年数による階層別、ブレーキ調整や新製品対応といった目的別に、系統立てた研修プログラムも組んでおり、全国から年間延べ2000人ほどの社員が訪れているという。

人材開発拠点「ビッグフィット」

 昇降機の保守については、実際の現場で意図的に学べないことも多い。当然、故障状態を自らつくり出すことはできないし、エレベーターの閉じ込め救出などはむしろない方がいい。しかし万一を考えると、突発的なトラブルに対処する能力は必須で、その意味でもビッグフィットは欠かせないわけだ。
 「特に現場に出るフィールド人材は、安全・安心を支える根幹であり、会社の財産」と山城啓二総務本部人材開発センター長はいう。同社では、現場力の維持・向上や個人のモチベーションアップ、職場の活性化などを目的に、全国のフィールド人材に頂点を目指してもらう「全国技能競技大会」を開催している。
 今月7、8の両日に、各支店などの選抜選手が技能と顧客対応力を競う保守部門の大会を開いた。全国大会は据え付け・改修部門と交互に開催しており、保守部門はことしで8回目。今回は5人の女性が初めて出場、2人1組の計16チームが競技に挑んだ。
 競技内容は、制限時間内に不具合個所を特定して修理するといった実務を始め、「五感」の鋭さを試す種目や電気回路製作など多種多様。目玉の1つでもある今大会の「客先面談」は、LED(発光ダイオード)照明への交換提案がテーマだったが、以前にはエレベーターに閉じ込められ、平静さを失っている人にいかに対処するかという難題もあった。
 出場選手の平均年齢は31.9歳で、前回大会より約4歳若返った。近年、若手採用を積極化する中、着実に若年層が育ってきている証左ともいえる。今大会は平均点も大幅にアップし、準優勝チームで過去最高を更新、優勝チームはさらに記録を伸ばした。大会委員長の伊豆原久男執行役員国内事業本部副事業本部長も「相当力が付いてきている。バックボーンにある普段の仕事をしっかりしている証だ」と手応えを口にする。

エスカレーターの故障対応

 初出場の“メンテウーマン”の活躍も目立った。優勝、準優勝はともに男女混合チームで、4位にも入った。そもそも保守現場は屋内が多く、新設現場に比べて力仕事も少ないため、女性が活躍しやすい現場といえそうだ。大会初日に会場へ足を運んだ内山高一社長も激励のあいさつで、女性が大いに活躍できる職場づくりを宣言した。
 バブル期に設置された大量の昇降機が今後一斉に更新期を迎える。リニューアル市場は、国内において成長の余地がある貴重なマーケットだ。もちろん営業部門と連携することになるが、「メンテナンスエンジニアは、日ごろから顧客と顔の見える付き合いをしており、製品の細かい状態も把握している」(伊豆原氏)という強みを持つ。本業の技能や知識に加え、提案営業にも通じた「フィールドセールスエンジニア」への期待は大きい。
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