岡村製作所が主催するオカムラデザインスペースRの第14回企画展「木のパーティション」が、東京都千代田区のオカムラガーデンコートショールームで開かれている。22日には、制作者である建築家の西沢立衛氏と構造エンジニアの金田光弘氏を招き、シンポジウム「木のパーティションが誕生するまで」も開かれ、厚さ2mmに切り出されたヒノキが揺らぐように立ち上がる、空間境界のデザインが生まれるまでの思考のプロセスを語った。
オカムラデザインスペースRは、「建築家と建築以外の領域の表現者との協働」を基本コンセプトに、1人の建築家を選び、「いま最も関心があって、挑戦してみたい空間・風景の創出」を依頼、毎年7月に開催している。
企画実行委員長を務める建築史家の川向正人氏をコーディネーターとしたシンポジウムでは、西沢氏が「建築の最大の個性の1つに、ずっとそこにあり環境の一部になっていくことがある。環境をつくること、環境と建築が調和することに興味がある」とした上で、『軽井沢千住博美術館』や『豊島美術館』『ルーヴル・ランス』(妹島和世氏との共同設計)などの作品を紹介。敷地の地形を生かしながら「内と外とをどういう関係にするかはどのプロジェクトでも重要」などと語った。
さらに今回の企画について、紙や綿、下敷きのようなアクリルなどさまざまなアイデアの末に「木」に至った経緯とともに、「かんなくずを立てるように、合板の表面のツキ板をそのまま立てる。桂むきするようにスライスした板は薄く軽く安い。自分でカットすることも持ち運びもできる。木の大きさによって長さも自由。丸太を切ったときには含水率が高く、その生々しさ、自然のパワーに興奮した」と説明。樹種をヒノキとした決め手は「節の存在」であり、「節がいろいろなことを決めていく。黙っていても3次曲面になる」とした。
川向氏は「いろいろな可能性を探った末に木に行き着いた。空間境界の可能性を広げるものとして期待していたが、西沢さんたちは何度も実験的なことを繰り返し、最終的な形も会場に持ち込んでから決めた。これはいままでにないこと。図面もなく、まさしく原始の森を原始の力でやるのだと感動した」と評価。
金田氏は「立体的な変形を期待しながらやったが、木は一本一本個体差があって読めないところがまた面白かった」と振り返った。
建築家の西沢立衛氏 |
西沢氏は「建築を経験する側の人は内も外も関係なく建築を受容している。建築をどう経験するかを設計の中心課題にできないか」「最近興味を持っているのが木造の建築。軒先にできる中間領域が面白い」などと今後の方向性についても示した。
企画展は8月5日まで。無料。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら
0 コメント :
コメントを投稿