鉄建が、岐阜県各務原市で施工する川崎重工業発注の「岐阜工場航空機部品加工工場建設工事」が着実に進展している。現場内で地組みした長大スパンのトラス梁を使うことで、柱のない大空間を実現するほか、複雑な鉄骨架構の対応にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を積極活用し、効率的かつ安全な施工にも取り組む。工事の進捗率は6月末現在で約59%。鉄骨工事はほぼ完了しており、12月末の引き渡しを予定している。写真は地組されたトラス梁を2代のクレーンで吊り上げる様子
同工事はS造2階建て延べ約4780㎡最大高さ約25.4mの工場で2015年6月から工事に着手した。工場は航空機胴体部部品の生産ラインになるため、大型加工機械が設置される。そこで、1・2階に東西38m、南北約61.3mの無柱空間が要求された。
その条件をクリアするため、長さ36.7mのトラス梁を2階と屋上階に各6本ずつ使用するトラス梁架構を採用。2階トラス梁は梁せい3.25mで約40t、屋上階トラス梁は梁せい2.4mで約24tと長大スパンのため、梁の自重でたわみが発生しないように「むくり」をつけ「へ」の字型になる加工を施した。坂井誠建築本部設計部課長は「トラスの設計は難しかったが、コスト的にも合理的で、鉄骨重量も少なかった」と振り返る。
長大スパンのトラス梁は、現場内に設けた地組ヤードで約1日かけて組み立てられ、精度を確保している。組み立て完了後、2台の130tクレーンで吊り上げられ、1m角の柱に高力ボルトで約1時間かけて接合される。現場のそばには航空自衛隊の岐阜基地があり航空法による45mの高度制限があるため、油圧で伸縮するオールテレーンクレーンを導入した。
高力ボルトで1時間程度掛けて接合される |
現場は東西面と北面の3方向を稼働中の工場で囲まれている厳しい条件のため、南側に搬入出口を設けて北側から鉄骨の組み立てを進める「建て逃げ工法」を採用。現場で発生する振動や粉塵による工場への影響を最小限に抑えながら施工を進めている。
設計施工案件であるため鉄骨建て方検討には、本社建築技術部と連携してBIMを活用し、施工計画を立案した。資材配置の検討や作業手順シミュレーションを重ね、作業員と視覚的に情報を進めた。宮崎達也所長は「BIMを活用することで、細かい作業や安全対策が明確にイメージできるようになった」と語る。またパースや内観をBIMで表現し、施主との合意形成にも活用された。今後のBIM活用についても「今回の工事を足がかりに積極的に使っていきたい」(坂井課長)考えだ。
現場管理にはiPadアプリ「スパイダープラス」を採用し、図面と写真をひも付けて管理するなど新技術の活用を進めている。宮崎所長は「新しい技術の導入に積極的にチャレンジしたい」と意欲を示す。
10月には最盛期を迎え、最大で60人以上の作業員が現場に入ることが予想される。宮崎所長は「川崎重工業内部でも注目が高く、その期待も大きい。無事故無災害はもちろん、要求される品質以上のものをつくりあげ、鉄建に頼んで良かったと言ってもらえるように最後までやり遂げたい」と意気込みを語る。
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