2016/07/20

【コルビュジエ】名作誕生のドラマをマテ氏らが紹介 シンポ「ロンシャンの丘との対話」


 早稲田大学會津八一記念博物館で開催されている「ル・コルビュジエ ロンシャンの丘との対話展」にあわせたシンポジウムが16日、東京都新宿区の同大学大隈記念講堂で開かれ、モダニズムの巨匠、ル・コルビュジエ晩年の名作である「ロンシャンの礼拝堂」(ノートル・ダム・デュ・オー礼拝堂)の誕生に至る生々しいドラマとともに、コルビュジエに師事した前川國男と吉阪隆正が受けた影響の大きさなどが貴重な映像も交えて紹介された=写真。

 基調講演したノートル・ダム・デュ・オーの慈善事業協会副プレジデントのジャン・フランソワ・マテ氏は、コルビュジエを設計者として迎える際に重要な役割を担った父、フランソワ・マテらの交渉の経緯や設計から建設、完成に至るまでのコルビュジエの言葉を交えたさまざまなエピソード、とりわけ計画段階で地元紙に「便器のようだ」とまで非難され、地元住民や時の公権力、さらにはバチカンからも激しい反対運動が巻き起こる中、建設を急いだことなどを当時の写真を交えながら詳しく説明した。

ジャン・フランソワ・マテ氏

 また、チーフとして現地に常駐し、施工図を作成したほか、トラブルがあれば自ら判断することもあったメゾニエの存在の大きさにも言及した。
 パネルディスカッションでは、鈴木恂早大名誉教授が師である吉阪が受けた影響として「造形の幅、振幅をおおらかに受け止めている」ことを挙げた。前川に師事した松隈洋京都工芸繊維大教授は、前川が1955年の完成から3年後の58年にロンシャンを訪れ、自ら回した8mmビデオの映像とともに、深い感動を記したエッセーを紹介し、「それだけの影響を前川に与えた。おそらくロンシャン・ショックは世界を駆けめぐったのではないか」と語った。
 2013年度からロンシャンの礼拝堂とその建築群の実測調査を継続して行っている同大学ル・コルビュジエ実測調査研究会の代表を務める古谷誠章教授は「ロンシャンは一色でまとまっているのではなく、複雑な考えが少しずつずれながら輪になるような空間であり、いろいろな人がこの丘に集まってくることでこれからも神聖な場をつくっていく」と締めくくった。
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