2016/07/09

【ヤマハ発動機】これぞヤマハのシナジー! シェアNo.1のFRP製学校プール、改修に注力


 「プールを工業製品ととらえ、必要な機能と安全性を備えた製品をつくってきた」とヤマハ発動機の加藤敏純取締役常務執行役員ビークル&ソリューション事業本部長は胸を張る。同社は約40年にわたりプール事業を展開し、これまでに学校やレジャー施設などに約3万8000基の納入実績がある。中でも、学校向けのFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製プールでは圧倒的なシェアを誇り、累計出荷は6000基を超えたが、目線の先にあるのは改修需要だ。

 静岡県湖西市の新居事業所は、同社プール事業の拠点として設計から製造までを一手に担う。70人が働く事業所内の第3工場では、サイドユニットと呼ばれるプール側面部のユニットを製造している。製造工程では、まず注文に合わせた型を作製し、紫外線や塩素薬品への耐久性を高めるためのゲルコートを型に吹き付ける。そこに布状のガラス繊維を敷き詰め、液状の樹脂を染みこませる。ガラス繊維を何層も重ねてFRP素材を層状に成形することで強度を高める。
 乾燥後は成形したFRP素材を型から引きはがし、組み立て用の穴を開け、排水金物を取り付ける。表面の研磨や品質検査を経て、出荷される。出荷したユニットを現地で組み立てて、プールが完成する。受注生産のため、機械化している工程が少なく、ほぼ全てを手作業で行う。

プール製造ではまず注文に合った型を作製

 同社がプール事業に着手したのは1974年。ボート製造で培ったFRP加工技術を生かして、国内で初めてオールFRP製のプールを製品化したのが始まりだ。当初は家庭向けの小型プールを販売していたが、幼稚園や保育園などに普及が進んだ。78年には学校向けプールの販売を始め、第1号は地元の磐田市立東部小学校に納入した。
 当時、学校のプールはコンクリート製が主流だったが、メンテナンス性や耐久性に優れているなどの利点から、徐々にFRP製のシェアを拡大してきた。新子緑朗プール事業推進部長は「プール事業は当社の中で最も個性的な事業だが、世の中の役に立ち自社のシナジー(相乗効果)を生かせる事業の1つだ」と強調する。
 現在では、学校向けのプールの約半数がFRP製で、そのうち同社製造のものが9割を占めている。しかし、近年は少子化の影響などにより学校プールの新設需要は縮小の兆しを見せている。同社では94年に過去最高となる267基の出荷を記録したが、2013年102基、14年133基、15年123基と全盛期の半分程度にとどまっている。

最終工程では表面の細かな傷を手作業で研磨

 そこで既設プールを改修するリニューアル事業に注力し始めた。コンクリート製プールの躯体をFRP製のプールユニットで覆い、新品同様に改修する。一般的な25mプールを新設する場合、設備なども含めて約1億円の費用がかかるが、リニューアルでは約4000万円まで抑えられる。工期も約45日と、新設の半分まで短縮が可能だ。
 学校プールの総数は約3万基で、同社では今後10年間で約1万基が改修時期を迎えると見積もっている。老朽化したプールは新設するのが現在の主流だが、コストメリットなどをアピールして市場への積極的な拡販を狙う。現在、同社でリニューアルするプールは年間約30基に達し、プール事業全体の売り上げの約4分の1を占めるまでに拡大している。小川恭弘プール事業推進部営業部長は「今後は年間約50基のリニューアルを目指し、リニューアル事業の売り上げを全体の約3分の1まで引き上げたい」と意気込む。15年のプール事業売上高は44億円。同社は新設市場の縮小を踏まえ、既設プールの改修にも力を入れながら、18年にプール事業売上高50億円を見据えている。
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