2015/12/04

【記者座談会】都心集中続く第2四半期 旺盛な建設需要に技能工を確保できるか

A 不動産大手の2016年3月期第2四半期決算が出そろった。好業績のようだが。

B 三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産ホールディングス(HD)、野村不動産HDの大手5社すべてが増収増益となり、このうち4社は純利益が過去最高を更新した。大幅な増収増益となった野村不動産HDは主力の住宅分譲がけん引し、東急不動産HDはインバウンド需要でハンズ事業が好調だった。ただ、全社に共通しているのは、都心のオフィス市場が堅調に推移したことだろう。空室率も低水準で推移して改善傾向にあるため、賃料の改定も進んでいる。
A 賃料が上がってもオフィス需要が好調な理由は。
C 企業の好調な業績を受け、人員拡大や組織集約など移転理由は前向きなものが多く、BCP(事業継続計画)に対する意識も高い。都心の最新設備の大規模オフィスでもすぐに埋まるという。最近では11月に竣工した三菱地所とJXHDの「大手門タワー・JXビル」が満室竣工となり、東急不動産が来春開業する「(仮称)銀座5丁目プロジェクト」も、ほぼ満室で竣工する見込みだという。
A 都心集中の傾向はしばらく続きそうだ。
B 森ビルが11月に公表した「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査」でも、15年上期の空室率は23区が4.6%で、うち都心3区は4.3%だが、15年末には23区が4.3%、都心3区は3.8%とその差がさらに広がると予測している。この調査の供給動向をみると、建築費上昇を受けた採算計画見直しにより17年は63万㎡にいったん減るが、その減少分は18年に131万㎡、19年には183万㎡と“後ずれ”になることを予測している。
 
A 鹿島が協力会社に出資して、グループ会社化するという一部報道があったが。旺盛な建設需要に対処するための囲い込みという見方でいいのかな。
D 将来的には出資も念頭にあるようだが、生産性の向上を目指し、協力会社と一緒に多能工を育てる研修を行うというのが本来の趣旨で、その延長線上に場合によっては、グループ会社化もあり得ると受け取った方がよい。技能労働者の多能工化は、鹿島の押味至一社長が以前から協力会社に投げ掛けていた。核となる職種・作業だけでなく、その周辺領域も担えば、収入の安定に加え、つなぎ作業の短縮で生産性も向上し、結果的に下請次数も削減するため、元下双方にとってメリットがあるからだ。
E 労働需給のひっ迫状況は現在、一時的に緩和しているが、中長期的には技能労働者が不足することは間違いない。直接、受注に影響するため、ゼネコン各社は協力会組織との連携を強め、その囲い込みに必死になっている。その方策の1つとして優秀な技能労働者に手当を支給する優良技能者認定制度の手当を厚くしたり、認定基準を実態に即して緩和するなどといった動きが活発化している。
F 以前、あるゼネコンが型枠大工を直接雇用して、不足する全国の現場に応援要員として派遣することを試みたが、優秀な人材が集まらずうまくいかなかったようだ。ただ、少子高齢化による労働人口の先細りを考えると、協力会社のグループ会社化や技能労働者の直接雇用も方向性の1つといえる。
G 大手ゼネコンだけでなく地方のゼネコンでも、生き残っていくには技能工を抱える協力会社の確保が不可欠という危機意識を持ち始めている。つい数年前までは人員整理に苦しんだが、これからは人員確保に180度転換しないといけない時代になった。
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