2015/07/20

【素材NOW】維持管理費用が格段に安い! 屋上緑化に「キリンソウ」広がる

建物の温度上昇を抑える屋上緑化に「常緑キリンソウ」を使う動きが広がっている。そのメリットは、維持管理コストの低さにある。降水がある地域では、水やりは不要、背丈は20-30cm程度で刈り込みも必要がない。1-2年に一度のメンテナンスで生育もできる。維持管理コストをかけることが難しかった集合住宅や庁舎などで導入が進む。写真は台東区屋上モデルガーデン。

 常緑キリンソウを屋上緑化に使う場合は袋方式が一般的だ。苗を入れた土壌をファスナー式の袋にしまうことで、土壌の流出を防ぎ、雑草の侵入を軽減することができる。50cm四方の袋に苗が6本入っており、並べるだけで設置が完了する。施工費用が少なくて済み、折板屋根のように凹凸のある屋上にも適用できる。

袋方式
関東地方を中心に販売展開する日昇工業の本庄祐一氏は「イニシャルコストは他植物に比べ割高だが、維持管理費用が格段に安く、年数を重ねるごとに有利になる」と話す。縁石、耐根シート、施工費のトータルの価格(税込み)は、50㎡当たり162万円。同社の試算例によると、100㎡施工した場合、芝生では施工から11年間のトータルコストが約600万円かかるのに対し、常緑キリンソウは初期投資の300万円弱からほとんど増えない。
 キリンソウは、日本各地の山地や海岸の乾いた岩の上などに自生する植物で、3-5cm程度の浅層土壌、温度がマイナス30度-40度の条件で生育が可能。さらに品種改良することで冬期間も常緑を保つようにしてある。茎が木質化することで、芝生などに比べ大量のCO2を固定化することが特徴だ。
 従来、芝やセダムの混合などで屋上緑化をする場合、維持管理に継続してコストがかかっていた。水やりや除草のほか、排水溝の清掃など月1回以上のメンテナンスが必要だ。マンションなど共同住宅では、共有部の維持管理にコストをかけ続けることは難しかった。
 ローコストでメリットの多い常緑キリンソウだが、種苗法の品種登録品であるため、導入する際には違法増殖品に注意が必要だ。2015年には類似する種苗約1800株を大阪府の高速道路料金所に無許可で植えた疑いで兵庫県の種苗販売業者が逮捕されている。常緑キリンソウ普及協会の松本功氏が「下請け、納品業者に違反があった場合、元請業者にも責任が及ぶ場合があることが浸透していない。ケースによっては、引渡し後の建物から、納品物の撤去が命じられる」と指摘するように、導入や施工に当たっては種苗法に基づく正規品であることの確認が必要だ。
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