2015/07/22

【大林組】優美な3本マストが復活! 重文「明治丸」修復完了、今秋一般公開へ

東京海洋大学の越中島キャンパス構内(東京都江東区)に重要文化財として保存されている「明治丸」が大林組の施工で修復を終え、3本マストの優美な姿を現した。19日に開かれた竣工式では、関係者が一堂に会して修復工事の完了を祝った。竣工式に先立って感謝状贈呈式も行われ、竹内俊郎東京海洋大学長から大林組の杉山直代表取締役副社長執行役員に感謝状が手渡された。

 修復は、マスト・ヤード、上甲板、木造建屋の復元と塗装修理工事。修復前は老朽化が進み、マスト・ヤードは撤去され、腐食した木造建屋は防水シートで覆われていた。設計は文化財建造物保存技術協会。工期は2013年12月から15年3月まで。

竹内俊郎東京海洋大学長(左から2人目)と杉山直代表取締役副社長執行役員(同3人目)
工事に当たっては、建築図に相当する図面がない中、精緻に実測したデータから上甲板のレベルを設定し直し、曲面形状の設計レベルを設定するなど、実測値に基づいて施工図を一から起こした。また建築手法を取り入れ、上甲板とデッキハウスの接合部の形状を雨漏りしにくくする提案も行い、無事の完工にこぎ着けた。その卓越した施工技術による尽力が高く評価され、感謝状が贈られた。
 杉山副社長執行役員は「明治丸が陸上に固定されていたことから、陸上の構築物として建設会社である当社が船の復元工事に取り組むこととなったが、海の日を前に無事竣工を迎えられたことを契機に、これからは洋上風力発電事業など海洋分野にも積極的に乗り出していきたい」とコメントした。
 今回の修復は、超党派の国会議員らで構成する海事振興連盟(会長・衛藤征士郎衆院議員)の働き掛けにより、12年度補正予算で実現。竣工式には、衛藤衆院議員、今村雅弘衆院議員、高木義明衆院議員、山崎孝明江東区長らも出席した。

竣工式で挨拶する竹内学長
式典では竹内学長が「重要文化財として明治丸の維持・管理を徹底させるとともに、本学学生を含め、次世代の海洋産業を担う青少年への海事意識啓発活動や船団海事技術講座などのセミナー開催で明治丸を中心に据えていく」とあいさつ。竣工式後の祝賀会では、竹内学長や杉山副社長執行役員らによるテープカットも行われた。
 明治丸は、日本政府が英国グラスゴーのネピア造船所に新鋭の灯台巡視船として発注し、1874年に竣工した。翌75年に小笠原諸島の領有問題が生じた際、日本政府の調査団を乗せて英国軍艦より早く父島に到着し、小笠原諸島領有の基礎固めに寄与したほか、1923年の関東大震災、45年の東京大空襲では被災した多くの住民を収容し、災害救援にも貢献。日本に現存する唯一の鉄船のため、その造船技術を伝える貴重な遺産として78年に国の重要文化財に指定された。今秋にも一般公開(無料)が予定されている。
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