2015/07/31

【新国立競技場】槇グループが五輪後、5-6万人に規模縮小を提案

建築家の槇文彦氏を代表とする建築家で構成する「槇グループ」は30日、東京都内で会見し、ゼロベースでの見直しとなった新国立競技場計画について、今後の進め方に関する見解を示した。新国立競技場を複合施設とせず、中心的な機能を早急に決める必要があるとした上で、安全性、集客力、景観、維持管理費、首都圏諸都市の機能分担の5つの観点から、施設規模は五輪時の8万人から会期後は旧国立競技場並みの5-6万人に縮小すべきと提言している。今後、政府に提言書を提出する。

 槇氏は「われわれはポストオリンピックを重要視している」とし、「五輪後の施設について、どのような機能を持たせることが一番よいか考えてきた」と説明。新国立競技場計画が白紙撤回されたことを歓迎するとともに、政府で進めている見直しに当たって考慮すべき点を提示した。
 新国立競技場の中心的な機能について、世界のスポーツ施設の潮流が複合施設でなく種目別専用施設を指向している点を指摘し、国際的な陸上競技場を主目的とするなら補助トラックの確保を一体的に計画すべきとした。国際的な球技大会の開催を主体とするなら天然芝の育成を最優先とし、ピッチと観客席の接近も必須だとした。
 また、音楽興行場としての利用は、運動施設の空きを埋める範囲での活用策と位置付け、芝生育成の妨げや工事費、維持管理費を増やすだけの可動屋根の設置は控えるべきとしている。
 皇居から代々木公園にかけて連続する緑地は、景観、生態、防災面からも貴重で重要な存在とし、これ以上の毀損(きそん)は避けるべきとするとともに、風致地区の観点からできる限り低い建物にし、極力建築面積を減少させることを新しいプログラムの目標にするよう求めている。
 また、すべての「聖地」を千駄ヶ谷に一極集中すべきでないとの見解を提示。横浜、調布、さいたまなどに大規模な競技場が整備されている点を踏まえ、五輪後には新国立競技場も含めてそれぞれの機能を分担して活用するよう提起している。
 さらに過去の各都市の主会場の建設費を示しながら、当初の建設整備予算である1300億円でも十分過ぎ、これを超える理由はないとした。また、設計者、施工者の選定については、過程と結果の透明性確保が重要なことは言うまでもないと結んでいる。
 同日の会見には、槇氏を始め、大野秀敏、中村勉、元倉真琴、山本圭介、古市徹雄の各氏が参加した。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 横浜にライブラリーカフェをオープン 飯田善彦建築工房  飯田善彦建築工房(飯田善彦代表)は9日、横浜市中区吉田町4-9の同事務所1階にライブラリーカフェをオープンした=写真。これまで集めてきた建築やアートにかかわる書籍などを学生や市民に見てもらおうという試み。7日のオープニングパーティーで飯田代表は「時々は講演会、映画や音楽鑑賞などを開きながら、面白いことができないかと思っている」と新たな展開に意欲を示した。  事務所の改修に当たっては、ヨコハマ創造都市センターの「芸術不動産リノベーション助成」… Read More
  • 大賞に木村、桐敷の2氏、作品賞は豊島美術館、真壁伝承館 建築学会賞決まる 豊島美術館(撮影:森川昇)  日本建築学会(和田章会長)は、2012年日本建築学会大賞、学会賞、教育賞、奨励賞、作品選奨、文化賞の受賞者を発表した。学会大賞は木村翔日大名誉教授と桐敷真次郎東京都立大名誉教授に決まった。4部門で構成する学会賞のうち、作品部門は豊島美術館の西沢立衛西沢立衛建築設計事務所代表、真壁伝承館の渡邉眞理氏、木下庸子氏(いずれも設計組織ADH代表)、新谷眞人オーク構造設計代表が選ばれた。  真壁伝承館(撮影:Na… Read More
  • 「本の洞窟」--体内読書空間を演出 京都造形大で伊東豊雄氏が企画展  建築家・伊東豊雄氏の企画展「伊東豊雄:Cave of Books(本の洞窟)」が10日、京都市左京区の京都造形芸術大学で開幕した。人間館1階のエントランスラウンジに伊東氏が手掛けた3次元の書棚を展示している=写真。 11日に開いたオープニングレセプションには、伊東氏を始め関係者ら約80人が参加した。  伊東氏は「設計を担当し、いま建設中の『台中メトロポリタン・オペラハウス』と同じく洞窟をイメージした。洞窟は人間の体の延長のようであり、その… Read More
  • メタボリストとの別れに名残惜しむ 菊竹清訓氏の追悼会  昨年12月に逝去した建築家、菊竹清訓氏の追悼の集いが12日、東京都新宿区の早稲田大学大隈講堂でしめやかに執り行われた。川添登発起人会代表による追悼の辞、長女の菊竹雪さんによる謝辞などのあと、800人を超える参列者が献花して最後の別れを惜しんだ。また、会場をリーガロイヤルホテル東京に移して、偲ぶ会も行われた。  追悼の集いでは、菊竹清訓建築設計事務所OBの内藤廣氏が進行役を務め、ビデオで生前の菊竹氏を偲んだ後、同事務所卒業生の会を代表して仙田… Read More
  • 神戸大建築卒業展「PARTY」 最優秀賞は山内さん 『Undifferential Architecture』  神戸大学の建築卒業展2012「PARTY」が13日から15日までの3日間、神戸市灘区の原田の森ギャラリーで行われた。14日には卒業設計を対象とするゲスト講評会が行われ=写真、プレゼンテーションとゲスト・来場者による審査の結果、最優秀賞に山内翔太さん(遠藤・浅井研究室)の『Undifferential Architecture』、太田浩史賞に小川絋司さん(槻橋研究室)の『海のニワ』… Read More

0 コメント :

コメントを投稿