2015/07/12

【本】日本→ブラジル、建築家→建築士…越境する南條洋雄氏が半生綴る『ボッサ・ノーヴァな建築考』

「ボッサ・ノーヴァ」はブラジルで1950年代後半から始まった新しい音楽運動だ。ポルトガル語で「新しい出っ張り」を意味している。本書が描くのはブラジルに移住し、「ボッサ・ノーヴァ」な生き方を学んだ建築家・南條洋雄氏の半生だ。東大で都市工学を学び、RIA建築綜合研究所(現アール・アイ・エー)で建築を修行し、オイルショックを契機としたブラジルへの移住と帰国後の活動まで丹念に語っている。

 帰国後の活動とは、建築と設計のあり方を示していく挑戦でもあった。サンバとジャズの境界を乗り越えることで「ボッサ・ノーヴァ」が生まれたのと同じように、都市と建築、ブラジルと日本、建築家と建築士、組織事務所とアトリエといった境界を軽々と越え新たな価値観を創造していく。
 なぜ南條氏は外部へと越境することができたのか。本書を読むにつれ、その答えは日本の建築界からは少し「出っ張った」建築家であり続けた南條氏の思想にあることが次第に明らかになっていく。建築家の役割が多様化する中で、未来の建築家像はどうあるべきか。それを考える大きな助けとなる1冊。
 (コム・ブレイン・1600円+税)
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