2015/07/11

【素材NOW】高耐食性めっき鋼と同組成の補修材 日新インダストリーの『MAZAX』

鋼材メーカー各社が販売に力を注ぐ高耐食性めっき鋼板。構造物の長寿命化ニーズを追い風に、建設分野では欠くことのできない製品として急成長しているが、加工や取り付け作業の現場からは的確に対応できる補修剤を求める声が挙がっている。日新インダストリー(東京都新宿区)の川西紀哉社長は「マグネシウムを含めた同じ組成の防さび塗料を開発できた」と、高耐食性めっき向けの補修剤『MAZAX(マザックス)』に自信をのぞかせる。

 日新製鋼、新日鉄住金、JFE鋼板などのメーカー各社は、めっき加工の成分として従来の溶融亜鉛とアルミニウム合金に、マグネシウムを加えることで、従来に比べて5倍以上もの防さび性能を実現した高耐食性めっき鋼板を相次ぎ市場投入してきた。鋼板の表面は1950年代に亜鉛、70年代には亜鉛とアルミに移行し、2000年代に入ってからはマグネシウムを含めためっき処理が主流になっている。
 めっき自体の加工技術は急速に進歩したが、補修技術については遅れをとっていた。高耐食性めっき鋼板はダクト、外装材、架台など建築や土木を問わず幅広い使われ方をしている。製品加工や建設工事などの現場は部材の切断や取り付け時に、めっき表面を除去してしまうケースが少なくない。その際に補修を施さなければ、そこからさびが進行してしまう。鋼板メーカー推奨の補修剤は存在するが、成分の違いによって上塗りができない製品もあり、使い手側から戸惑いの声も上がっていた。

試行導入するユーザーも広がっている
ある鋼板加工の専門会社から同社に相談があったのは3年前。さび止め専門の塗料メーカーとして、誰もやらないような隙間の部分で商売をしてきた自負もあり、川西社長は「現場の声に応えたい」と開発に乗り出すことを決断した。高耐食性めっき加工と同じレベルの性能を確保し、しかも現場でしっかりと上塗りもできる補修剤(防さび塗料)をいかに実現するか。『マザックス』の誕生は試行錯誤の繰り返しだった。
 そもそも塗料は溶剤(シンナー)と顔料、それらをつなぐバインダー(樹脂)で構成される。顔料には高耐食性めっきの成分と同様に亜鉛、アルミ、マグネシウムの3つを入れ、上塗りがしやすいように樹脂の量も通常より増やす必要があった。苦労したのはマグネシウムの粒子が150ミクロンと他の成分に比べて大きいため、いかにして粒子を小さくするかという部分だった。単純に混ぜ合わせただけでは粒子の粗さが目立ち、塗った後にそこから「点さび」が生じてしまう可能性があったからだ。
 同社は、アルミとマグネシウムを半々とした配合の合金をつくり、それを粉末化することにより、その問題を解決した。粒子は45ミクロンまで小さくなり、塗装後の平滑性も実現した。それでも通常に比べて粒子が大きいため、しっかりと上塗りまで実現できるようにするためには混入する樹脂の量を従来よりも倍以上に増やす必要があった。

マグネシウムの粒子は150ミクロンから45ミクロンに
配分の試行錯誤を繰り返した結果、アルミは6%、マグネシウムは3%という比率に落ち着いた。防さびの塩水噴霧試験では目標の1000時間を上回り、1500時間の壁もクリアした。マグネシウムを入れた補修剤は業界で初めての試み。「高耐食めっき鋼板向けの補修剤ではあるが、ワンランク上のさび止め塗料でもある。塩害対策用としても大いに使ってもらいたい」と川西社長は手応えを口にする。
 マザックスの仕上がり色はシルバー。エアゾールスプレーから刷毛塗り、エアレスまで塗装条件に合わせて幅広く活用できる。同社はダイレクトメールでユーザーへの情報提供を進めており、現場での試行に乗り出すケースも徐々に出始めているという。鉄板メーカー推奨品としての試験も進めており、早ければ1年以内に認定される見通しだ。
 問い合わせは同社・電話03-3209-2181。
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