2015/07/19

【現場最前線】80mの“国内最長級”を張り出し架設! 北海道横断自動車道・第1ポンケトナイ川橋上部工事

北海道東北部に位置する訓子府町で、国内最長級の張り出し長を誇る「北海道横断自動車道訓子府町第1ポンケトナイ川橋上部工事」が大成建設の施工で進められている。吉田朋広作業所長は国内外で多くの実績を持つ橋づくりのエキスパートだが、長さ80mの張り出し架設はわずかな重みでもバランスが崩れるため難易度が高く、「上げ越しの繊細なコントロールが求められる」と慎重に作業を進める。雪荷重による構造変形への影響、長距離コンクリート圧送などの難題を高精度な施工管理と創意工夫で乗り越え、「会心の出来栄え」と自負する張り出し作業は大詰めを迎えている。写真は側径間部で進む配筋作業。

 国土交通省北海道開発局網走開発建設部が発注した同工事は、長さ79㎞の北海道横断自動車道の一部を構成する有効幅員10.5mの2径間連続PC箱桁ラーメン橋。長さは192mだが、最大支間長99m、張り出し長80mはともに道内で2番目、全国でも屈指の長さだ。

最大支間長90メートル、張り出し長80メートルはともに道内で2番目、全国で屈指の長さ
橋脚の高さは49mあり、3階建てビルに相当する高さ10mの柱頭部を加えると脚下から桁上面までの高さは59mに達する。橋桁は平面でカーブしているため、張り出し中は上下方向の曲げ変形に加え、ねじれ対策も必要になる。吉田所長は「左右のバランスが崩れないよう、特に先端の橋上には不要な物を置かないことを徹底した」という。
 場所打ちコンクリートによる張り出し作業は2014年7月から始まり、極寒の冬季をまたぐ。上下変位の規格値はプラスマイナス2cmだが、冬には雪荷重の影響が懸念されたため、「橋面の除雪には特に苦労した」と振り返る。施工個所が現道を跨いでいるため、つららの落下防止にも細心の注意を払った。
 左右26ブロックで構成する橋桁への生コンクリート圧送作業は、50mを超える垂直方向に加え、80m横引きする必要があるため、計算上は11ブロック目でポンプ能力が追い付かないという結果が出ていた。
 このため、「当初はコンクリートの配合を変えて圧送するプランも視野に入れていた」が、張り出し施工延長ごとの圧送圧力の確認など、圧送業者との綿密な打ち合わせが奏功し、結果的には配合を変えず、設備も増強せずに施工することができた。最適な圧送スピードを可能にしたオペレーターの技量や生コンクリートの品質など、すべてがうまくかみ合った。
 冬季には平均気温がマイナス20度以下となる環境下で、しっかりとした給熱養生を実施することで、極寒の季節をまたぐ通年施工にもかかわらず、高品質なコンクリート構造物に仕上げている。

吉田朋広作業所長
同社が展開するベトナム人技能実習生の受け入れモデルの1つである現場では、6人の実習生が汗を流す。入国前に建設用語を含めた日本語を勉強してきているため、現場でのコミュニケーションは円滑だ。吉田所長は「素直でまじめ。とにかく一生懸命に働いている」と評価する。

現場で汗を流すベトナム人技能実習生の皆さん。左からドさん、チャンさん、ブイさん
取材に応じてくれたド・ディン・ズンさん、チャン・ヒュー・クォンさん、ブイ・スァン・トゥアンさんは鉄筋の技能実習生として来日している。多くの技能を学ぶために現場では型枠作業もこなす。3人とも「所長はやさしく、仕事は楽しい」と笑顔をみせる。
 工事の進捗率は9割を超え、間もなく橋台部分との閉合を迎えるが、吉田所長は「引き続き無事故・無災害で完成を迎えたい」と気を引き締める。
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