2015/07/17

【現場最前線】大深度を安全・高精度に! 水中作業機「T-iROBO UW」が活躍する天ケ瀬ダム再開発現場

大成建設がアクティオ、極東建設と、ダムのリニューアル工事向けに開発したシャフト式水中作業機「T-iROBO UW(アンダーウォーター)」が、国土交通省近畿地方整備局発注の「天ケ瀬ダム再開発トンネル式放流設備流入部建設工事」(京都府宇治市)で活躍している。急傾斜地、大深度という条件化で岩盤掘削などの水中作業を遠隔操作によって安全、高精度に進めることができるほか、仮設桟橋が不要なため、工程も短縮する。8月から前庭部の岩盤掘削に本格着手する。

 大成建設の施工範囲は立坑設置によるドライ掘削で工事を進める流入部と、水深30-40mの地盤をシャフト式水中作業機によって水上から施工する前庭部に分かれる。
 現場は周囲に道路があり、ダムサイトは急傾斜地で施工ヤードが確保できないため、流入部は桟橋を設置して施工している。当初は前庭部も含めた4000㎡の桟橋を設置する計画だったが、シャフト式水中作業機の導入により、桟橋面積を2000㎡に半減した。桟橋の設置作業と水上施工を同時並行で進めることができるため、当初計画に比べ、前庭部の工程を大幅に短縮することができる。
 水深50mまで対応するシャフト式水中作業機は、組み立て式のフロート台船、クローラクレーン、シャフト固定装置、シャフト、水中作業機などで構成する。水上の台船から地盤にシャフトを降ろし、シャフトを昇降する水中作業機にさまざまなアタッチメントを取り付けて砕岩、掘削、ズリ処理、精密測深、撮影などの一連の水中作業をダイバーを使わずに安全、確実に進めることができる。同社の中村泰介天ケ瀬ダム放流設備建設工事作業所長は、「大深度で既設コンクリートを壊すなど、早く安全にさまざまなダムリニューアルに対応できる」と説明する。

遠隔操作室ではさまざまな情報がモニターに表示され、リアルな操作性を実現
シャフトに取り付けた水中作業機は、バックホウと同様の構造で3次元の動きが可能。アニメーションによる可視化を含む情報化施工技術により、高精度な遠隔操作を実現している。遠隔操作室ではさまざまな情報がモニターに表示されるほか、水中マイクからの湖底の音を聞くこともでき、五感に訴えたリアルな操作性を可能にしている。超音波水中カメラの映像も表示されるため、夜間や濁水といった状況下でも良好な作業性を確保できる。
 長さ21.3m、幅17.8mの前庭部は鋼管矢板の打設が既に完了。水面上には台船(長さ37.7m、幅25.5m)が前庭部を覆うように設置されている。現在は掘削開始前に湖底の土砂などを水中作業機に取り付けたバケットで浚渫している。掘削作業は8月から始め、9月に完了する予定だ。
 天ケ瀬ダム再開発事業では、既設ダムの脇に流入部、導流部、ゲート室部、減勢池部、吐口部で構成するトンネル式放流設備を整備する。再開発によって放流能力を引き上げることで、洪水調節機能を高めるとともに、水道用水の確保や発電能力の増強にも貢献する。2018年の全体完成を目指す。
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