2015/07/25

【現場最前線】初のBIM導入で有効性実感! 大詰め迎える佐野市新庁舎建設工事現場

鹿島の施工で進めている佐野市新庁舎建設工事が、10月の竣工に向けて大詰めを迎えている。同工事を率いる松浦稔国所長はこれまでの工程を振り返り、「現場が円滑に進むよう、先手を打って方策を考え、実践してきた」と力を込める。総合評価方式による入札公告時(2013年6月)から同工事と向き合い、技術的課題への対応を具体化。受注後、品質確保と生産性向上、工期確保、仮設の合理化、安全・環境、地域貢献などに取り組み、成果を上げてきた。写真は北東側から見た新庁舎(7月10日撮影)。

 同庁舎の規模はSRC一部S造地下1階地上7階建て延べ2万0440㎡。設計は佐藤総合計画・都市環境建築設計所JVが担当した。
 建設地(栃木県佐野市高砂1)は北側から大型車両が進入できないため、南側からのアプローチで約50m四方の建物を奥(北側)から手際よく施工できるかがポイントとなった。松浦所長は「逆Hの形の仮設構台を設け、2ルート(1ルート幅10m)、2班で工事を進める計画を立てた」と振り返る。外周はSMW(ソイルセメント連続壁)を採用。13年10月の着工後、土工事が円滑に運び、後工程に弾みをつけた。
 基礎躯体工事、免震装置設置を経て、14年9月に鉄骨建て方を開始し、15年1月に鉄骨が上棟、4月に地上躯体工事が完了した。外装工事もほぼ終わり、7月末には足場をすべて解体する予定だ。

免震基礎試験施工
免震装置は、地下1階の駐車場の空間を確保するため、柱頭免震を採用。基礎は四角形状のベースプレートに圧入でコンクリートを流し込むことを踏まえ、試験施工を2回行い、品質確保に万全を期した。
 鉄骨建て方は、敷地の奥から3つの工区(A-C)で順次実施しながら、並行して躯体工事を進めた。効率化を図るため、鉄骨節割りを当初の4節から3節に変更。また、鉄骨建て方と同時に屋上に設置する設備機器を先行的に揚重し、コスト縮減と工程確保も図った。
 同庁舎のデザインは、柱と梁による格子状のパターンで構成し、仕上げはタイルが基調。課題となる上裏のタイル張りでは、万が一に備え、ステンレスのワイヤーを仕込む落下防止措置を施した。また、型枠の構築時に支保工がセットされている躯体設備を導入し、作業効率を高めた。

屋上配管のBIM活用
今回の工事では鹿島関東支店で初めてBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を導入。「以前から興味があった。前任地の現場でBIMに接し、次の現場で導入したいと考えていた」。今回は施工図の作成でBIMを活用したが、「設備配管の納まりや貫通部分などを立体的にチェックできることが大きい」と有効性を実感。さらに、複雑な形状で計画された議場の仕上げ・納まりなどの検討にも生かし、今回の取り組みは「今後の試金石になる」ととらえている。

松浦稔国所長
現場運営に当たっては、報告、連絡、相談の「報・連・相(ほうれんそう)」を徹底するとともに、職長会活動なども充実させた。職長会会長で佐野市出身の鳶工、石川義憲さん(大勝建設、宇都宮市)とは、これまでも何度か現場を共にした仲。「わたしの思いをよくくみ取っていただき、男気も強い。出身地の仕事でもあり非常にはりきっている」と厚い信頼を寄せる。職長たちの活動も自主性が増し、例えば一斉清掃も現場周辺にとどまらず、駅周辺まで分担して行うようにしたり、バーベキューや餅つき大会で交流を深めた。地域貢献として地元企業を積極活用したが「助けられたことも多分にあった」とし、今後の活躍を期待する。
 佐野市には「非常に協力的に対応していただき大変感謝している」と実感を込める。なかでも山留工事は当初、仮設の切梁で対応する予定だったが、アースアンカー工法への対応に対し、行政側が「迅速に対応していただき、スムーズな施工につながった」と語る。官民の強い一体感のもと、工事はラストスパートに入った。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 8月1日から「中部建築賞」の作品募集 新居千秋氏ら2段階で審査 昨年の一般部門入賞作品「むさしの幼稚園」 中部9県の建築関連団体で構成する中部建築賞協議会は、第44回「中部建築賞」の募集要項を発表した。8月1日から同31日まで応募作品の申し込みを受け付ける。2段階審査を経て、12月上旬に受賞作品を発表する。作品の応募条件は、2012年3月31日までに中部圏(愛知、三重、岐阜、静岡、福井、石川、富山、長野、滋賀の9県)で新築、改修、修復した建築物など。 受賞対象となるのは建築主・設計者・施工者の3者で、… Read More
  • インドの最先端建築に触れる! スタジオ・ムンバイ展、ギャラ・間で始まる インドを代表する建築家、ビジョイ・ジェイン氏が率いるスタジオ・ムンバイの展覧会が、東京都港区のTOTOギャラリー・間で始まった=写真。ジェイン氏の指導のもと100人を超える職人が、自然素材や伝統技法を駆使して建築に取り組む「PRAXIS=実践」の過程を紹介している。 スタジオ・ムンバイは、造成から設計、施工に至るまで、建築をほぼ人の手だけで完成させる。 展覧会にあわせて来日したジェイン氏は、会見で「思考と身体、心が統合され、一体化していること… Read More
  • 世界初の連結型蓄熱槽でピーク電力55%OFF 東京電機大の千住キャンパス 校舎内のシャフトに設けられた蓄熱槽 東京電機大学は、東京千住キャンパス(東京都足立区)にヒートポンプ蓄熱システムと最先端の省エネルギー技術を使い、ピーク電力を55%削減することに成功した。夏季にピーク電力を迎える平日の昼間2時の7月の開校日平均実績は1500㌔ワットで、蓄熱システムを導入しなかった場合の試算と比べると約40%減、約1000㌔ワット減り、キャンパス全体に施した各種エネルギー技術を導入しなかった場合と比べると約55%減、約190… Read More
  • 日本人のお祭り行動をデジタル化 東京理科大とSci-arcがコラボレーション 両校の学生で真剣にワークショップ 東京理科大学理工学部建築学科の学生らで運営する「TUS Digital Studio」と南カリフォルニア建築大学(サイアーク、Sci-arc)の学生らで組織する日本スタジオのコラボレーションが実現した。この催しは「MATSURI HACKING」と名付けられ、毎年靖国神社で開かれている「みたままつり」での日本人の行動をGPS(全地球測位システム)調査し、3次元グラフィックソフト「Maya」を使った流体解析シ… Read More
  • ブータンの人はなぜ幸せなのか? 千葉工大の建築がシンポ開催 千葉工業大学建築都市環境学科は、3年間にわたるブータン王国の伝統住居・集落の実測調査研究を踏まえたシンポジウムを、東京都港区の建築会館で開いた。古市徹雄教授を中心とする調査団が、講師に招いた月尾嘉男東大名誉教授らと、同国の状況やコミュニティーのあり方を話し合った=写真。  コミュニティーデザインをテーマに講演した山崎亮京都造形芸術大教授は、島根県海士町で総合計画づくりに携わった事例を挙げ「住民が自ら動き出せば人と人との結び付きが強くなる。その… Read More

0 コメント :

コメントを投稿