下町の情緒を残しながら最先端の大学施設が建設されるなど、新旧入り交じる街並みの東京都葛飾区金町に、竹中工務店が商業施設併設タワーマンション「住友不動産金町I街区」の建設を進めている。機能的で良質な住宅というニーズを満たすため、施工者はどう取り組むのか。学生たちは躯体工事や免震装置、内装工事といった一連の工程を見学し、独自技術や職人とのやりとりなど、星拓治作業所長の解説を興味津々に聞き入った。芝浦工業大学工学部建築工学科志手研究室、同蟹澤研究室、首都大学東京都市環境学部建築都市コース権藤研究室の11人が訪問し、芝浦工大4年生の初鹿雅朗さんが代表リポートする。
◆迫力ある高層タワー棟
私たちが今回見学させていただいた現場へは金町駅から徒歩で向かった。大学のキャンパスや7万㎡もの広大な公園があり、その目の前に、ひときわ存在感のある高層建築が目に入った。これこそが、今回見学させていただいた、竣工時には地上37階にもなる「住友不動産金町I街区新築工事」のタワー棟である。(見学時は29階まででき上がっていた)このようなスケールの大きなものをつくる仕事は建設業ならではであり、見学前からその大きさに圧倒されたことを覚えている。
◆一室が完成するまで
私たちは1階の現場事務所にて、星作業所長から工事概要説明を受けた後、タワー棟を見学した。見学当時は29階まで躯体ができ上がっており、最初に大型の仮設エレベーターにて一気に29階まで上り、まず躯体工事を見学した。タワー棟の架構システムは「スーパーフレックスチューブ」と呼ばれる形式を採用。高強度の鉄筋とコンクリートを使用することにより、通常より柱と梁が少なく済む。実際に柱が少ないせいか開放感のある空間になっていて、移動もしやすく、施工もしやすくなるのではないかと感じた。
次に内装工事を見学した。階を下っていくごとに内装が次第にでき上がっていき、躯体だけの状態から内装ができ上がるまでの過程を見学することができた。1時間ほどの見学時間であったが、マンションの一室ができ上がるまでに、さまざまな工程があることを知り、大変勉強になった。
◆効率的な計画
建設現場では、QCDSE(品質・コスト・工程・安全・環境)が重要だと言われている。今回見学させてもらった現場でも、それぞれを高めるために、さまざまな工夫がされていると感じた。その中でも、私が特に工夫されていると感じたのは「工期」を守るための工夫である。最近の建設業界では、職人不足や高齢化などの問題が顕著になっている。海外研修生を受け入れるなどの取り組みも行われ始めているが、根本的な解決には至っておらず、むしろ省人化が求められている。
そのような中、今回の現場に特徴的な工夫があった。1つ目に、PCa(プレキャスト)やユニットケーブルなどを用いて、作業の効率化、省人化を行っていたことである。PCaの使用により、雨天などでコンクリート打設が行えず工程が圧迫されることも少なくなる。また、職人の技術レベルに左右されにくい高品質な施工も期待できる。2つ目は、効率的に考えられた施工計画である。平面を3つの工区に分け、2日タクトで次の工区に移っていく、つまり、6日で1フロアが完成していくということである。ゼネコン側も管理しやすく、職人側も同じテンポで作業を行うことができるのでミスも少なくなるのではないかと感じた。さらに、躯体ができ上がった2つ下の階から内装工事を並行して進めていた。内装工事は、行う作業が多く、さまざまな職種の職人が入り乱れて作業を行うため、作業待ちなどの無駄な時間が生じやすい。しかし、この現場では、1フロア6日ピッチの工程計画の順守に努め、計画どおりに進んでいるとのことだった。
◆見学を終えて
見学後、事務所に戻り、質疑応答の時間があった。そこで印象に残ったのは、安全管理についての話である。見学させていただいた現場では、外装工事が完了するまでの階の周りにネットを張った養生フレームをせり上げることで落下防止を行っているが、このネットがもし緩んでいたりすれば、大事故につながりかねない。よってネットの仕舞いを徹底しているとのことだ。
また、最後に星作業所長が「建築現場は状況が日々変わり、計画どおりにいかないことも多いが、目の前で建物がつくられていく楽しさやでき上がった時の達成感は建設業の大きな魅力」とおっしゃっていたことが心に残っている。
今回見学させてもらった現場は、さまざまな工法や計画の工夫を感じた現場であった。また、工期を守り、かつ高品質のものをつくるために、職人さんや管理者などの現場員のみならず、施工のことまで考えた設計や、技術研究所のサポートなど、多くの人たちの協力を得ながら、皆が同じゴールを目指すという建設業の魅力を感じる現場でもあった。私も来年から施工管理者として働くことになっているが、適切な段取りを行えるよう努力し、多くの人たちと協力しながら、質の高い作品づくりに携わりたいと思う。
■研究室紹介 無形技術の伝承こそ強み
芝浦工業大学工学部建築工学科 志手一哉准教授
私の研究室は「建築生産マネジメント研究室」と名付けており、平たく言えば、建築産業の生産性をどのよう にすれば向上できるかを考える研究室である。最近はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)への取り組み方を中心に学生と議論をしている が、集合住宅の工程計画・管理の合理化は、私自身が長年取り組んでいる研究の対象である。
このたび見学させていただいたプロジェクトは、躯体・仕上ともに的確な構工法選択と綿密な工程計画が行われ、厳格な進捗管理が実施されている印象を強く受けた。この現場の施工に携わっている方々が長年、継承・蓄積してきたノウハウが見事に凝縮された状況を見るとこができ、感服した。こうした無形の技術の伝承こそマネジメントの本質であり、わが国の建設業の強さであると思う。現場見学に参加した学生たちが、その凄みを感じ取ってくれたと信じたい。最後に、見学を受け入れていただいた作業所の皆さまにお礼を申し上げたい。
■工事概要
▽工事名称=住友不動産金町I街区新築工事(タワー棟)
▽建設地=東京都葛飾区新宿6-2400-18
▽建築主=住友不動産
▽設計・施工=竹中工務店
▽工期=2013年12月-16年3月
▽敷地面積=1万1819㎡
▽建築面積=5641㎡
▽延べ床面積=6万4107㎡
▽構造=RC造地下1階地上37階建て塔屋1層、基礎免震構造
▽用途=共同住宅
▽住宅戸数=700戸
■参加者の声
首都大学東京4年 松倉裕貴さん
施工の仕方や工夫を知ることができ、大学の講義とは違った経験ができました。現場がきれいで驚きました。
首都大学東京4年 市川大暉さん
「現場のきれいさ」が施工効率化や安全性向上のために重要なのだと身をもって体感しました。
芝浦工業大学大学院1年 林晃士さん
技研と共同で実現させたTOFT(格子状地盤改良)を山留め代わりに使用する工法など、工事の生産性を高めるための技術力に感動しました。
芝浦工業大学4年 千葉優斗さん
PCaを使った工法、また内装仕上げにも工夫を凝らし工期短縮実現や、職人不足対策など現在において理想に近い施工方法だと思いました。
芝浦工業大学4年 田村祐也さん
1フロア6日サイクルで工程計画がされており、見学では躯体工事から完成までの流れが分かりやすかったです。
芝浦工業大学4年 初鹿雅朗さん
躯体のプレキャスト化による効率化や適切な工区分けによる作業の平準化など、綿密に計画された現場だと感じました。
芝浦工業大学4年 香川宏樹さん
今回の現場を見学して、PCaの多用や電気設備のユニット化などの施工の簡易化がとても印象に残りました。
芝浦工業大学4年 小嶋将太さん
下の階に行くにつれてマンションの内装がどのような順番でできていくのかが分かりとても面白かったです。
芝浦工業大学4年 阿部愛美さん
施工の過程を、順を追って見学することができた。普段は見ることができない現場を見学できて、勉強になりました。
芝浦工業大学4年 布施朋美さん
機械式継手を間近に見られて、実際に新しい構法が使われていて現場に生かされていると感じました。
芝浦工業大学4年 桑原康さん
スーパーフレックスチューブという竹中独自の構法を間近で見られてとても勉強になりました。
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◆迫力ある高層タワー棟
私たちが今回見学させていただいた現場へは金町駅から徒歩で向かった。大学のキャンパスや7万㎡もの広大な公園があり、その目の前に、ひときわ存在感のある高層建築が目に入った。これこそが、今回見学させていただいた、竣工時には地上37階にもなる「住友不動産金町I街区新築工事」のタワー棟である。(見学時は29階まででき上がっていた)このようなスケールの大きなものをつくる仕事は建設業ならではであり、見学前からその大きさに圧倒されたことを覚えている。
◆一室が完成するまで
スーパーフレックスチューブで自由度の高い住空間を創出 |
次に内装工事を見学した。階を下っていくごとに内装が次第にでき上がっていき、躯体だけの状態から内装ができ上がるまでの過程を見学することができた。1時間ほどの見学時間であったが、マンションの一室ができ上がるまでに、さまざまな工程があることを知り、大変勉強になった。
◆効率的な計画
屋上で躯体工事の説明を受ける |
躯体から内装までの各段階を見学 |
◆見学を終えて
見学後、事務所に戻り、質疑応答の時間があった。そこで印象に残ったのは、安全管理についての話である。見学させていただいた現場では、外装工事が完了するまでの階の周りにネットを張った養生フレームをせり上げることで落下防止を行っているが、このネットがもし緩んでいたりすれば、大事故につながりかねない。よってネットの仕舞いを徹底しているとのことだ。
また、最後に星作業所長が「建築現場は状況が日々変わり、計画どおりにいかないことも多いが、目の前で建物がつくられていく楽しさやでき上がった時の達成感は建設業の大きな魅力」とおっしゃっていたことが心に残っている。
見学後、星作業所長(左から5番目)を囲んで |
■研究室紹介 無形技術の伝承こそ強み
芝浦工業大学工学部建築工学科 志手一哉准教授
私の研究室は「建築生産マネジメント研究室」と名付けており、平たく言えば、建築産業の生産性をどのよう にすれば向上できるかを考える研究室である。最近はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)への取り組み方を中心に学生と議論をしている が、集合住宅の工程計画・管理の合理化は、私自身が長年取り組んでいる研究の対象である。
このたび見学させていただいたプロジェクトは、躯体・仕上ともに的確な構工法選択と綿密な工程計画が行われ、厳格な進捗管理が実施されている印象を強く受けた。この現場の施工に携わっている方々が長年、継承・蓄積してきたノウハウが見事に凝縮された状況を見るとこができ、感服した。こうした無形の技術の伝承こそマネジメントの本質であり、わが国の建設業の強さであると思う。現場見学に参加した学生たちが、その凄みを感じ取ってくれたと信じたい。最後に、見学を受け入れていただいた作業所の皆さまにお礼を申し上げたい。
■工事概要
▽工事名称=住友不動産金町I街区新築工事(タワー棟)
▽建設地=東京都葛飾区新宿6-2400-18
▽建築主=住友不動産
▽設計・施工=竹中工務店
▽工期=2013年12月-16年3月
▽敷地面積=1万1819㎡
▽建築面積=5641㎡
▽延べ床面積=6万4107㎡
▽構造=RC造地下1階地上37階建て塔屋1層、基礎免震構造
▽用途=共同住宅
▽住宅戸数=700戸
■参加者の声
首都大学東京4年 松倉裕貴さん
施工の仕方や工夫を知ることができ、大学の講義とは違った経験ができました。現場がきれいで驚きました。
首都大学東京4年 市川大暉さん
「現場のきれいさ」が施工効率化や安全性向上のために重要なのだと身をもって体感しました。
芝浦工業大学大学院1年 林晃士さん
技研と共同で実現させたTOFT(格子状地盤改良)を山留め代わりに使用する工法など、工事の生産性を高めるための技術力に感動しました。
芝浦工業大学4年 千葉優斗さん
PCaを使った工法、また内装仕上げにも工夫を凝らし工期短縮実現や、職人不足対策など現在において理想に近い施工方法だと思いました。
芝浦工業大学4年 田村祐也さん
1フロア6日サイクルで工程計画がされており、見学では躯体工事から完成までの流れが分かりやすかったです。
芝浦工業大学4年 初鹿雅朗さん
躯体のプレキャスト化による効率化や適切な工区分けによる作業の平準化など、綿密に計画された現場だと感じました。
芝浦工業大学4年 香川宏樹さん
今回の現場を見学して、PCaの多用や電気設備のユニット化などの施工の簡易化がとても印象に残りました。
芝浦工業大学4年 小嶋将太さん
下の階に行くにつれてマンションの内装がどのような順番でできていくのかが分かりとても面白かったです。
芝浦工業大学4年 阿部愛美さん
施工の過程を、順を追って見学することができた。普段は見ることができない現場を見学できて、勉強になりました。
芝浦工業大学4年 布施朋美さん
機械式継手を間近に見られて、実際に新しい構法が使われていて現場に生かされていると感じました。
芝浦工業大学4年 桑原康さん
スーパーフレックスチューブという竹中独自の構法を間近で見られてとても勉強になりました。
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