日本建築士会連合会は、第18回日・韓・中建築士協議会・福岡会議の一環で「ワークショップin八女」を開いた=写真。福岡県八女市福島の伝統建築物保存地区を見学し、日本、韓国、中国それぞれの視点から国や立場の違いを超えてまちの再生のあり方を具体的に意見交換した。
同会議は韓国、中国との相互理解や情報交換、技術交流、友好などを目的に、建築に関する多様な問題を共通テーマに1997年から毎年開催している。福岡会議では、新たな試みとして九州大学や西日本工業大学の学生らも参加し、会議室から町に舞台を移して「まちの再生と創生」をテーマに人材交流プログラム体験ワークショップを実施した=写真。
ワークショップには、士会連合会から三井所清典会長を始め国際委員会委員や福岡県建築士会幹部らが参加。大韓建築士協会の趙忠基会長、中国全国注冊建築師管理委員会の劉暁艶副主任ら両会の代表、学生や地元八女市のNPO関係者らを含め約50人が参加した。
中島孝行NPO法人八女町並みデザイン研究会理事長が八女市の歴史や風土、まちづくりの取り組みなどを説明した後、日本、韓国、中国、学生の4グループに分かれ、伝統的な町並み保存が進む福島地区をまち歩きした。その後、横町町屋交流館で発表会、ディスカッションを実施した。
韓国、中国両グループからは、古い町並みの保存や伝統的な家屋、建築物の再生など八女の取り組みに一定の評価を示しながら、「まちづくりのコンセプトや方向性が明確になっていない」ことが指摘された。その上で、韓国グループからは「活性化に向けたストーリーづくり、歩行者・自転車の動線や宿泊プログラムを含めた持続可能なまちづくり、国際的なイベントなどによる情報発信」など、中国グループからは「伝統的な建築様式の基準づくりや色彩、サイン計画のシステム化、外堀を軸とした景観の形成」など具体的な改善策が提案された。また、中国の参加者は「建築士がまちづくりの中で重要な役割を担っている」ことを評価した。
ディスカッションで三井所会長は「まちづくりの課題を整理し、共有して取り組むことが重要だ。市民に対しては、昔の八女の町並みや生活の様子を再現するなど具体的なイメージを示すことで合意形成も図られる」と述べた。 また、九州大大学院人間環境学府の志賀勉准教授は 「装飾や家紋、展示物など暮らしの中のデザインのあり方をチャームポイントとする一方で、道路や電柱など現代社会に必要なデザインをどう構築するか課題も感じた。 デザインの広がりを専門家として将来どう考えていくか、学生にとって有益な体験ができた」と感謝した。
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