建築設計は高い社会貢献度を持つとともに、その過程や結果において常にリスクがつきまとう。本書では、建築設計者の尊厳を守りながら、より良い建築環境を構築し社会に貢献するためにはどうしたらよいかという課題を建築紛争という切り口から考える。
第I編は建築設計者の職能と建築紛争について概観し、第II編では設計業務の範囲を整理し、報酬と契約を説明する。第III編は保険制度を解説した上で設計・監理業務の責任をまとめ、第IV編では、実例を見ながら建築紛争となった際の解決について触れる。説明が必要な用語には、基礎的な法律用語を含めて丁寧な注釈が付いているため、理解を深めることができる。
紛争は、問題が発生したからすぐ起こるという性質のものではなく、施主や施工者との信頼関係の喪失によるところが大きい。ルールを学ぶことは設計者として当然だが、裁判事例を見ると、コミュニケーション不足と取れる事例が数多く見受けられる。
建築紛争に限らず、建築設計に携わる心構えとして活用してほしい。
(丸善出版・2800円+税)
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