2015/12/30

【2015年を振り返る】関東甲信重大ニュース リニア、八ッ場が本格化、自然災害・偽装事件の試練



 2015年の関東甲信地方は、リニア中央新幹線や八ッ場ダム本体が着工し、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の埼玉県内区間が全線開通するなど明るい話題があった一方、自然災害、免震ゴム性能と杭データ偽装・流用などが業界に試練をもたらした。担い手3法の成立を受け、各発注者による着実な動きもみられた。この1年を振り返る。写真は新たな観光資源でもある八ッ場ダムでの「やんばウオーク」(10月25日)。

■関東・東北豪雨で教訓

9月23日撮影の鬼怒川堤防決壊個所付近。奥に見えるのは応急復旧工事中の現場。


 9月10日に茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊するなど、茨城、栃木両県に甚大な被害をもたらした関東・東北豪雨災害は、地球温暖化や気候変動で大量の雨が一気に襲ってくる恐ろしさと堤防強化の必要性を改めて浮き彫りにした。決壊個所を含む応急復旧工事では、関東地方整備局、企業・団体が協力し、迅速に対応した。今後、直轄と補助を合わせ約600億円の事業費を20年度まで投入する「鬼怒川緊急対策プロジェクト」を推進する。

■横浜市庁舎など大型事業が動く
 土木では、東名高速道路と第三京浜道路を結ぶ横浜環状北西線のシールド工事のうち、首都高速道路会社が発注する港北行、横浜市発注の青葉行の各施工者が決まった。18年度内の完成を目標に工事を進めている。
 建築では、延べ約14万0700㎡の横浜市庁舎移転新築工事の落札者が決定した。高さは約152mで、同市施行初の超高層建築として話題を集めている。
 このほか、2月10日に起工式が開かれた八ッ場ダム本体工事は、計画発表から60年以上の年月を経て本格始動した。関東地方整備局は建設現場と地元の観光資源が一体となった地域振興に力を注いでおり、ダム土工開始から本体打設完了までダム建設史に残る高速施工での完成を目指す。

■圏央道埼玉全通でストック効果
 圏央道は、桶川北本インターチェンジ(IC)~白岡菖蒲IC間約10.8㎞が10月31日に開通した。これにより、埼玉県内区間が全線開通し、東名、中央、関越、東北の各自動車道がつながり、ストック効果発揮への期待が高まっている。6月には神崎IC~大栄ジャンクション間9.7㎞も開通した。事業中の境古河IC~つくば中央IC間は、軟弱地盤対策の検討結果や関東・東北豪雨災害による工事現場の浸水を踏まえて工程を精査した結果、16年度内に開通できる見通しとなった。

■幕張、江ノ島が五輪会場に
 国際オリンピック委員会(IOC)は6月、20年東京五輪の会場変更を承認した。それまで会場はすべて東京都内だったが、フェンシングやテコンドー、レスリングを幕張メッセ(千葉市)、セーリングを江の島(神奈川県藤沢市)に変更し、サッカーは埼玉スタジアム(さいたま市)、日産スタジアム(横浜市)などに決まった。
 11月には、国際パラリンピック委員会(IPC)も、ゴールボールやシッティングバレーボール、車いすフェンシング、テコンドーの会場を幕張メッセとするなど会場計画を承認した。
 これを受け各発注者は既存施設の改修に向けて動き始めている。 

■週休2日制度へモデル工事試行

 15年度は担い手3法の本格運用元年を迎えた。このうち、改正公共工事品質確保促進法(品確法)は、基本理念に労働環境の改善などを新たに盛り込むとともに、基本理念の実行を発注者責務として明確化している。
 関東甲信地区では、中長期的な担い手確保に向け「週休2日制度」のモデル工事の試行が関東地方整備局、長野県、茨城県、千葉県で始まった。東京都も16年1月以降に公告する案件で試行することを決めた。

■リニア沿線3県まちづくりへ機運
 東海旅客鉄道(JR東海)が整備するリニア中央新幹線の工事が15年から本格的に動き出した。関東甲信地区では、沿線3県の地元自治体で駅設置を契機とした新たなまちづくりの機運が高まっている。
 中でも神奈川県駅設置予定の相模原市は、駅設置周辺地区を「広域交流拠点」に位置付けており、庁内での議論を活発化している。対象地域では再開発や道路整備、連続立体交差事業などを予定している。
 長野県飯田市内に計画している駅の周辺整備構想(検討範囲約7.8ha)では、“高度なトランジットハブ”を形成する方針だ。山梨県は16年度内にも「リニア環境未来都市整備方針」を策定する。 

■つくば市運動公園住民投票で白紙
 茨城県つくば市は、総事業費304億9700万円の総合運動公園基本計画を2月に策定したが、住民団体が住民投票で賛否を問うことを求めた。8月の投票の結果、反対票が有効票の8割を占め、市原健一市長は、9月に計画を白紙撤回した。12月には議会が事業の検証とスポーツ施設のあり方を調査するための特別委員会の設置を決めた。

■データ偽装など不祥事も発生
 ことしも建設業界にさまざまな不祥事が発生した。2月には川崎市の職員が応札予定業者に工事価格を事前に漏らし、神奈川県警に逮捕された。市は再発防止に向け「情報管理特別対策委員会」を設置し、対応を決めた。
 建築物に関連するデータの偽装も相次いだ。3月には建物用「免震ゴム」、10月には高速道路などに使われる防振ゴムの性能に関するデータを不正に改ざんしていた問題が明らかになり、国が対応に追われた。さらに横浜市内のマンションでは、杭データ偽装が発覚し、現在も住民らを交えた議論が繰り広げられている。
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