2015/12/29

【2015年を振り返る】関西10大ニュース 大型プロジェクトが終息、次代を見据え新たな動き


 2015年もまもなく終わる。建設業界は活性化したと言われる一方で関西地区は大型プロジェクトが終息、厳しい受注競争が再燃しているとも言われている。そうした中でもまちづくりや人材育成など、次代を見据えた新たな動きも見られた1年。関西の建設業に関連する主な動きをまとめた。画像は国立循環器病研究センターイメージパース。

◆1 医療核とした吹田操車場跡地 大型医療機関の施工者決定

 吹田操車場跡地(大阪府吹田市)の医療拠点整備事業は、国立循環器病研究センターと吹田市民病院の2つの大型医療機関の移転整備で施工者が決まった。7・8街区の集合住宅や4街区の駅前複合施設の事業者も決定し、最盛期を迎えている。
 国立循環器病研究センターの規模はS(CFT柱)・RC・SRC造地下2階地上10階建て塔屋2層延べ12万5772㎡。吹田市民病院はRC一部S造8階建て塔屋1層延べ3万6650㎡。
 4街区では西日本旅客鉄道が事業者となり、駅前複合施設を整備する。敷地面積は8235㎡。7・8街区の土地A、同Bはともに近鉄不動産・大和ハウス工業・名鉄不動産JVが取得した。Aは中高層集合住宅用地、Bは集合住宅か戸建住宅用地として開発する予定だ。
 操車場跡地北側に隣接する正雀下水処理場跡地についても2月に「イノベーションパーク(仮称)利用基本計画」が策定、研究開発施設やオフィスなど誘致し操車場跡地の医療機関との連携を目指している。年明け1月には吹田市が2街区で計画している高齢者向けウェルネス住宅の整備・運営事業者を選定する公募型プロポーザルも公告する見込みだ。

◆2 関空運営権 輸送需要の拡大目指す
 運営権の売却による航空輸送需要拡大を目指す関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)のコンセッション事業。オリックスやヴァンシ・エアポートなどで構成するコンソーシアム(連合体)が事業者に決まった。
 同コンソーシアムは特別目的会社「関西エアポート会社」を設立、12月15日付で新関空会社と契約を結んだ。社長にはオリックス出身の山谷佳之氏、副社長にヴァンシ・エアポート出身のエマヌエル・ムノント氏が就任した。
 アジアのリーディング空港を目指し2059年度時点で2空港あわせた旅客数は現在の約1.7倍に当たる5751万人、貨物量は同2.2倍の194万tを数値目標に掲げた。
 コンソーシアムにはオリックス、ヴァンシのほか金融やエネルギー、鉄道など30社が名を連ね、建設関係からは大林組、積水ハウス、大和ハウス工業、竹中工務店が参画している。運営権の対価等支払額は約490億円、履行保証金は約1750億円。空港機能の更新など設備投資の総額は9448億円で年平均215億円を見込む。事業期間は2016年4月1日から60年3月31日までの44年間。

◆3 阪神・大丸百貨店の建替始動 ヴォーリズ建築を保存
 大阪を代表するデパートの阪神百貨店梅田本店と大丸心斎橋店の建て替え計画が進められている。

大丸心斎橋店のパース

 阪神電鉄と阪急電鉄は、7月から阪神百貨店が入る大阪神ビルディングと新阪急ビルの建て替え事業「梅田1丁目1番地計画」の1期部分新築工事に着手している。2018年春の1期工事完成、22年の全体完成を目指す。
 設計施工は竹中工務店で、基本計画・特区申請・基本設計は日本設計が担当。規模は、S一部SRC造地下3階地上38階建て延べ約26万㎡。建設地は大阪市北区梅田1―1―1ほかの敷地1万2200㎡。
 大丸松坂屋百貨店は、大丸心斎橋店の本館建て替えを計画しており、約380億円を投じて延べ約6万6000㎡の新本館を建設する。16年2月から解体工事、17年1月から本館新築工事に着手、19年秋に新本館を開業する。設計は日建設計、解体工事の施工は竹中工務店が担当している。
 新本館は地下3階地上11階建て延べ約6万6000㎡、売場面積は約4万㎡が計画されている。高さは約60m。現本館はウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計を手掛けており、その保存にも努める。
 建設地は中央区心斎橋筋1―7―1の敷地5616㎡。

◆4 吹田に新たなにぎわい拠点 サッカー場と大型複合
 大阪府吹田市の万博記念公園周辺では10月にサッカーJ1「ガンバ大阪」のホームスタジアムとなる市立吹田サッカースタジアム、11月に日本最大級の大型複合施設「エキスポシティ」が完成。立て続けにランドマーク施設がオープンしたことで、周辺地域の活性化が期待されている。
 市立吹田サッカースタジアムは、発注者のスタジアム建設募金団体が中心となり、企業や市民からの寄付金とスポーツ振興事業関連の助成金で建設された。設計施工は竹中工務店、CM(コンストラクション・マネジメント)業務は安井建築設計事務所が担当。
 スタジアムの規模はRC(在来+PC)・S造6階建て延べ6万3908㎡。4万人収容可能な大規模スタジアムだ。
 エキスポシティは、8つの大型エンターテインメント施設と「ららぽーとEXPOCITY」で構成。規模はS造1―3階建て延べ約22万3000㎡。設計施工は竹中工務店・竹中土木JV、環境デザインはフェルナンド・バスケス、外構デザインを鳳コンサルタント環境デザイン研究所が担当した。

◆5 京都縦貫道が全線開通 延長100km、悲願が実現
 近畿地方整備局が建設を進めていた丹波綾部道路(京丹波わちIC~丹波IC)が開通、京都府長年の悲願でもあった延長100㎞の全線開通がようやく実現した。1981年の着工から34年の歳月を要し総工費約9000億円、延べ労働者数700万人のビッグプロジェクトとなった。
 同自動車道は、宮津市今福と久御山町森を結ぶ高規格幹線道路で、綾部宮津(長さ23.4㎞)、丹波綾部(同29.2㎞)、京都丹波(同31.3㎞)、京都第二外環状(同15.7㎞)の4つの道路で構成する。整備前と比較し宮津市から京都市までの所要時間は、180分から90分へと半分に短縮された。舞鶴若狭自動車道や名神高速道路などと一体となって高速輸送道路ネットワークを形成、府内全域を短時間で結ぶだけでなく他府県との広域的なつながりも強化する。地域観光や産業の活性化も期待されている。

◆6 整備局長に山田邦博氏就任 維持管理で自治体支援
 2015年は、近畿地方整備局幹部の交代も相次いだ。
 7月31日付で山田邦博大臣官房技術審議官が新局長に就任した。山田局長は就任会見で防災・減災対策」と「インフラ老朽化対策」「地域の活性化」を3本の柱として掲げ、施策展開する方針を明らかにした。「長寿命化対策により全体の事業費をできるだけ圧縮していく。耐用年数を迎えるインフラが多いため、平準化も必要な施策となる」との考えを示した。また、点検と診断を重視し国が主導して進めていく考えで、特に地方公共団体は体制や予算などを維持管理に回すことが厳しいため、「技術的な支援をしていきたい」とした。
 このほか、高●(橋の異体字)広幸副局長を始め、黒川剛総務部長、小林稔企画部長、石原康弘道路部長、寺本耕一建政部長、稲田雅裕港湾空港部長、白石和司営繕部長らが着任した。 大型物流施設の開発が引き続き活発だ。新名神高速道路(高槻~神戸間)の2016年度開通も控え、近年は延べ10万㎡を超える施設建設も相次ぐ。

◆7 大型物流開発 新名神開通控え活発化
 プロロジスは、大阪府茨木市で同社としては国内最大となる延べ19万㎡規模の物流施設建設に着手した(施工=清水建設)。新名神茨木北ICに近接する立地で、16年9月の完成を予定している。
 レッドウッド・グループは大阪市住之江区と大阪府藤井寺市の2カ所で大型物流施設の建設に着手した。住之江区の倉庫は1期計画だけで延べ約12万㎡(施工=前田建設)、藤井寺のプロジェクトも延べ18万㎡(施工=大成建設)にのぼる。
 大和ハウス工業は大阪府茨木市にあったパナソニックの工場跡地を取得、ヤマトホールディングスグループ専用の物流施設建設に着手した(施工=フジタ)。規模は延べ約9万㎡、17年10月の完成を目指している。

◆8 大阪どうなる?府市W選 副首都推進本部を設置
 大阪府知事と大阪市長のダブル選挙が11月22日に行われ、知事選は現職の松井一郎氏が再選、市長選は前衆院議員の吉村洋文氏が初当選を果たした。府市ともに自民党が推薦する候補が敗れ、「大阪維新の会」が勝利を収める構図となった。
 松井知事は2期目の就任会見で選挙公約に掲げた大阪の「副首都化」推進について、「副首都推進本部」を大阪市と共同で設置する考えを表明した。
 吉村新市長も21日に就任会見を開き、大阪活性化の観点から中央省庁やIR(統合型リゾート)誘致に取り組みたいとの考えを示した。

◆9 「新名神」開通へ着々 大型構造物に最新技術投入
 新名神高速道路の整備事業が、着々と進む。高槻第1ジャンクション(JCT)から神戸JCTの40.5㎞と、城陽JCTから八幡JCTまでの3.5㎞は2016年度内の開通が目標。主に山間部を通過するルートとなるため大型構造物が多く、バタフライウェブを採用した世界初のエクストラドーズド橋である武庫川橋(長さ442.2m)を始め、最先端の土木技術が投入されている。舗装工事がスタートしたほか、同区間唯一のサービスエリア(SA)となる宝塚SAの本体建設工事も現在発注手続き中で、最終段階を迎えている。

◆10 広域地方計画策定 リニア早期整備求める
 国の関係機関や地方公共団体による関西地方広域計画の策定作業が始まり、9月には中間整理案が示された。同計画でリニア中央新幹線をどのように位置付けるのかについて、委員から意見が相次いだ。
 リニア新幹線整備については、中間整理案で「東京~大阪間の開業を見据え、スーパー・メガリージョンの一翼としてヒトやモノなどの対流を促進する」と記載された。この文言に異論を唱え、参加した兵庫県、大阪市、大阪府、奈良県、関西経済連合会から、東京~名古屋間との同時開業を含め「早期整備」の明記を求める意見が相次いだ。最終的にどのように記載されるのかに注目が集まっている。
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