2015/12/12

【素材NOW】成長する錆が橋梁を守る! 長寿命化でニーズで注目集める「耐候性鋼」


 「錆(さび)も成長していく」と話し始めたのは新日鉄住金の田中睦人厚板商品技術室長。社会インフラの長寿命化ニーズを背景に、橋梁を中心に「耐候性鋼」の採用が着実に広がっていることを明かす。鋼材表面にできた緻密な錆層が腐食の進行を抑えるため、塗装処理を省略でき、LCC(ライフサイクルコスト)の削減につながる。最近では高性能鋼(SBHS)に耐候性仕様を採用する事例も出てきた。

 耐候性鋼のJIS化は40年以上前にさかのぼる。既に国内橋梁の約3分の1にまで採用が広がる。銅、ニッケル、クロムなどの合金元素を配合することで、年月の経過とともに鋼材表面を保護する緻密な錆層が形成され、腐食の原因となる酸素や水の浸透を防ぐ。
 「錆は常に生きている。ちゃんと育てれば、素材としても良くなる。まるで人が成長していくように、錆も成長していく」(田中氏)。同社は米国から技術導入する形で1959年から販売を進めてきた。橋梁の採用数は着実に伸び、業界全体では年平均10万tペースで推移している。意匠効果もあり、建築物への採用も全体量の1割程度を占めている状況だ。

降伏強度500Nの高性能鋼に、耐候性仕様が採用された沼田原橋(写真提供:瀧上工業)

 ことし8月に竣工した奈良県十津川村の沼田原橋では、高性能鋼に耐候性仕様が適用された。11年に竣工した三重県の新宮川橋に次ぐ2例目。新宮川橋の鋼材は降伏強度400ニュートン(N)だったが、沼田原橋は降伏強度500Nとなり、よりハイレベルな高性能鋼に耐候性仕様が採用された。
 そもそも高性能鋼は一般的な橋梁に使われている溶接構造用の圧延鋼材と比べ、強度や靱性が高く、しかも溶接性や加工性にも優れている。降伏強度は従来より1、2割高いため、軽量化などの経済設計が実現する。東京ゲートブリッジなど11件の橋梁に採用され、出荷数量は2万2000t超に達する。
 耐候性仕様は、表面塗装の必要性がない点が大きなメリットだ。橋の耐用年数が100年の場合、塗装の塗り替えは2、3回を数える。足場設置など関連費用も含めれば、維持管理で建設コストと同等規模の費用が発生する。田中氏は「耐候性鋼の価格は1t当たり2万円ほど高くなるが、ライフサイクルで考えれば、コストメリットは大きい」と強調する。
 技術的には錆を錆で防ぐ原理だが、飛来塩分量が規定を上回る海岸線では適用が制限されている。特に環境の厳しい日本海沿岸部は場所によって海岸線から20㎞を超える必要もある。田中氏は「実はニッケルの量を増やせば、鋼材自体の耐久性が増し、規定外の海岸線沿いでも耐候性仕様を採用できる」と説明する。

海岸線から600mの場所にある北陸新幹線の青海川橋梁

 ことし3月に開業した北陸新幹線では、8橋に約5000tの耐候性鋼が採用された。中でも富山と新潟の県境に位置する青海川橋梁は海岸線から約600mという環境条件の過酷な場所。本来であれば規定外の場所だが、通常0.1%程度のニッケル量を3%まで増やすことで採用にこぎ着けた。
 社会インフラの長寿命化ニーズを背景に、同社は耐候性仕様が右肩上がりで推移する青写真を描く。田中氏は「ニーズをどれだけ需要に変えられるか」と考えている。厳密に飛来塩分量などを把握して採用を決める場合、1年間の測定が求められる。そうした時間的余裕がないケースも多いだけに「環境判断をどう導くかが採用のかぎを握る」からだ。海岸沿いをターゲットにしたニッケル系耐候性鋼を採用した橋梁は、15年度末までに累計で100橋を超える予定だ。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【復興特別版】霊山道路金弁蔵トンネルが貫通! ICT活用で安全・効率施工 東北地方整備局が、復興支援道路として整備を進めている国道115号相馬福島道路・霊山(りょうぜん)道路の(仮称)金弁蔵(こんべんぞう)トンネルが14日、待望の貫通を迎え、福島県伊達市霊山町の現地で式典が開かれた。施工は飛島建設が担当。今後、覆工コンクリート工事などを進め、8月末の竣工を目指す。霊山道路は2017年度に開通する予定だ。写真は貫通した切羽から日射しが差し込む金弁蔵トンネル。  相馬福島道路は、1日に全線開通した常磐自動車道と東北縦… Read More
  • 【復興特別版】2998mの唐丹第3トンネルが着工! 釜石市内へのアクセス円滑に 東北地方整備局が震災復興のリーディングプロジェクトとして整備を進めている三陸沿岸道路で2番目に長いトンネルとなる、唐丹第3トンネル工事の着工式が23日、岩手県釜石市唐丹町大曾根の現地で開かれた。今後、鹿島の施工で掘削工事が本格化する。  同工事は、三陸沿岸道路の一部をなす吉浜釜石道路の釜石南インターチェンジ(IC)~釜石ジャンクション(JCT)間で、長大トンネルと釜石南ICを築造する。 トンネルの概要は、長さ2998m。内空断面積は… Read More
  • 【中国地整】応急組立橋の主構部組み立て作業を披露! 解体は12-20日の予定 中国地方整備局中国技術事務所は6日、広島市安芸区の同事務所構内で応急組立橋の組立・解体訓練見学会を開き、主構(4m)部の組み立て作業を披露した=写真。  組立・解体訓練は長さ40mの橋梁が被災した場合を想定し、先月27日から取付桁部・主構(8m)部の組み立てを開始していた。見学会当日には、主構部の組み立てを実施し、その後、9日に高力ボルト締め付け、組み立てを完成させた。11日まで完成した応急組立橋を展示する。解体は12-20日を予定している… Read More
  • 【夕張シューパロダム】ついに竣工! 国内最大級の「再開発ダム」 北海道開発局札幌開発建設部が、石狩川水系夕張川の夕張市で建設を進めていた夕張シューパロダムが完成を迎え7日、夕張市のゆうばり文化スポーツセンターで竣工式が開かれた。関係自治体や地元選出国会議員、施工関係者、地域住民らが多数が参加し、待望の完成を祝った。施工は大成・岩田地崎・中山JVが担当した。  修ばつ式に続いて行われた竣工式で、石田悦一札幌開発建設部長は「洪水への安全度が高まり、安定した農業、生活用水の確保や電力の供給により地域の安定発展… Read More
  • 【北陸地整】砂防ボランティア組織「白山砂防スペシャルエンジニア」発足! 北陸地方整備局金沢河川国道事務所が進めている白山の砂防事業について、啓もう活動や災害時の支援、砂防技術の伝承を行うボランティア組織、「白山砂防スペシャルエンジニア(HSSE)」が発足した=写真。11日に同事務所で開かれた発足式には金澤文彦同事務所長も来賓として出席し、「HSSEの発足は心強い」と活動に期待感を示した。  砂防ボランティア活動は1995年の阪神・淡路大震災後に全国で本格化し、都道府県などの単位で行政のOB砂防技術者が砂防ボラン… Read More

0 コメント :

コメントを投稿