2015/12/18

【欧州で人気】ザハ事務所、アルテアらがサポート! 木製曲面フレームのエレガントな自転車「AERO」


 欧州で木製のフレームを持った曲面デザインの自転車が話題になっている。「AERO」と名付けられたこの自転車は、オーストリア・ウィーンで建築事務所を構えるアタナス・ジェレフさん、マリヤ・コロロバさん、マルティノ・フッツさんの3人がプロジェクトとして展開しているもの。アタナスさんらがウィーンのザハ・ハディドスタジオに所属していた時、木造曲面構造体の研究のためのケーススタディーとして自転車を題材に取り上げたことがきっかけでスタートした。

 このプロジェクトのサポート企業には、構造解析ソフト会社のアルテア・エンジニアリング(米国)、木材メーカーのHoeller(伊)、メディアプロダクションのMaveo(独)、ウイーン応用芸術大、ザハ・ハディドスタジオが名を連ねる。
 AEROの構造は、より少ない素材で高強度かつエレガントな形状を目指して研究がスタートした。自転車のフレームは、6枚の木質板が層状の構造を形作っている。また座席付近では各層がバラバラに分かれてサスペンションの役割を担っているのが最大の特徴だ。構造面、デザイン面の双方で最適解を追い求めた形が、このフレームに昇華されている。
 このデザインは、アルテア社の構造形状解析ソフトウエア「Inspire」とCAE(コンピューター支援エンジニアリング)シミュレーションソフトウエアの「HyperWorks」を利用して実現している。
 Inspireなどは、航空機の設計などにも使われるソフトウエアで、素材を最大限効率利用する方法を提案するものだ。
 天然素材である木材を使っているため、HyperWorksでさまざまな木材をテストし、その後、実物の木材を使って自転車のフレーム模型を制作した。また3人は、ウイーン応用芸術大の木工場で、木材の複合材開発も研究しているという。アタナスさんは、「自転車は、力の流れが容易にイメージできるので、構造や素材の基礎研究に向いている。この研究は、いずれ建築の現場に応用したい」と話す。

開発者の3人。右からアタナスさん、マリヤさん、マルティノさん

 AEROは、研究目的だけでなく実際に販売する目的でプロジェクトが進んでいる。来年4月に欧州で予定している展示に向けて、セカンドプロトタイプを完成させる予定だ。
 「販売用フレームの構造解析も進めており、EUが定める構造試験をクリアすれば、販売に向けたプラットフォームを立ち上げたい」(アタナスさん)という。
 来年のミラノ・デザインウイークには、彼らがデザインした木造のシャンデリアも出品される予定だ。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿