コストセンターからプロフィットセンターへ--。主に地方公共団体が維持管理するスタジアムやアリーナについて、利益を最大化するプロフィットセンターとしての位置付けに転換しようという動きが活発化してきた。欧米などでは既に進んでいる商業施設や宿泊施設、福祉施設などの併設で利益を生み出そうというものだ。国が「スポーツ産業」を成長戦略の柱としたことで、スタジアムやアリーナを多目的に使うためのリノベーションや運営の見直しが加速しそうだ。こうした動きの中、9月末に横浜アリーナで、日本初開催となった「スタジアム&アリーナ2016」を共催したスペースメディアジャパンの管埜寛之社長に開催の意図などを聞いた。
「スタジアム&アリーナ2016」は、スポーツ施設の設計、建築、マネジメントをテーマにした国際展示会とコンファレンスで構成する。主催者は英国の出版社、ALAD LIMITED。コンベンションや展示会企画などのコングレとスペースメディアジャパンが共催した。
管埜社長は「欧州を中心に1999年から開かれ、今回は18回目。出展67社のうち49社が海外で、セミナーの発表も海外からの企業が7割ほどになり、利益を生む施設の先進事例などが多数紹介された。設計事務所の関心も高く全国から参加があった」と述べる。
国が打ち出した日本再興戦略2016の「スポーツ産業の未来開拓」構想とタイミングが一致したこともあり、3日間の開催期間中約2000人が来場した。
管埜社長は「国が2025年を目標に、スポーツ産業を現在の5.5兆円から15兆円に拡大させる未来開拓構想を打ち出していて、その柱がスタジアム・アリーナの改革になる。ここに『コストセンター』から『プロフィットセンター』への転換が明記されている。この考え方は欧州などで進んでいて、例えば英国のサッカークラブチーム、ウェストハム・ユナイテッドFCが、ロンドンオリンピックのメインスタジアムを本拠地にしたが、リノベーションしてオフシーズンはホテルとして運用されている。これは建物を当初から多目的に使えるよう、設計・デザインしているから可能になった」と話す。
日本のスタジアムやアリーナは、ほとんどが自治体の管理でスポーツ以外での活用が難しい面があり、ビジネスを見いだすという発想も生まれづらかった。
未来開拓構想では、「スマート・ベニュー」の考え方を取り入れた多機能型施設先進事例形成支援をうたっており、公共施設や商業施設との複合施設の展開など、国と地方公共団体との連携を深めていく。
スペースメディアジャパン・管埜寛之社長 |
管埜社長は「今回はこうした構想と3者で企画したイベントのタイミングが偶然一致して、スポーツ庁、スポーツ競技団体などに全面的に協力していただけることになった。今回の展示とコンファレンスでは、ファンサービスから施設の設計まで、欧米の先進的なノウハウ、経験値をご提供できたのではないかと思っている」と話す。
来年秋には千葉市の幕張メッセで「スタジアム&アリーナ2017」の開催を予定している。
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