2016/11/27

【現場最前線】鉄建が手掛ける東北新幹線、在来線の復旧・復興工事


 東日本大震災から5年8カ月、津波により甚大な被害を受けた沿岸部では、いまも復興に向けた槌(つち)音が響きわたっている。鉄建は、東日本旅客鉄道(JR東日本)のパートナー企業として全社を挙げ、大動脈の東北新幹線を始め、地域住民に欠かせない在来線の復旧・復興工事に尽力してきた。学校の高台移転や復興道路整備などのプロジェクトにも取り組んでいる。林康雄社長=写真右=の現地視察に同行し、東北の地に刻まれつつある同社の足跡の一部をたどった。

 沿岸部の鉄道は、津波で駅舎や軌道が流出するなどの深刻な被害を受けた。JR東日本は地元のまちづくり計画などとも整合を取りながら、在来線を順次再開させてきた。

常磐線山下駅。12月10日開業へ試運転が行われている

 12月10日には、常磐線駒ケ嶺~浜吉田間が待望の開業を迎える。同区間では3つの駅舎を含む延長約14.6㎞を内陸側へ移す。鉄建は山下駅を中心とする4.8㎞区間の工事を担当。ここでは高架橋やトンネル、土工構造物のほか、軌道の工事も手掛けた。復興推進の指揮を執るJR東日本東北工事事務所の菅原正美次長は「工事発注前からの施工者との綿密な協議が迅速な施工に役立った」と振り返る。

仙石線高架橋。健全な既設高架橋の一部をかさ上げして再利用
仙石線野蒜駅


 鉄建は仙石線陸前大塚~陸前小野間でも野蒜駅の内陸移設を含む復旧工事を担当。新設高架橋に、健全な状態が保たれていた既設高架橋をかさ上げしてドッキングするという異例の工事も成し遂げた。

気仙沼線BRT志津川駅

気仙沼線津谷川橋梁。今後、右手の河川方にBRT専用橋を架ける

 三陸地方の新しい足として、最終的にBRT(バス高速輸送システム)での本格復旧が選択された気仙沼線と大船渡線。BRTの駅舎や専用レーンの整備では、すべてに鉄建がかかわっている。JR東日本としても「鉄道敷を道路に変える初めての経験」(菅原次長)で、当初は関係者間で議論を重ねながら、手探りでプロジェクトを進めてきた。BRTは既に、以前の鉄道よりも多い本数で日々運行し、地域に親しまれているが、橋梁新設などを含む専用道の延伸工事はこれからも続く。菅原次長は「これまでに培ってきたノウハウをもとに、もう一段踏み込んだ技術提案をしてほしい」と期待を寄せる。

山田線第34閉伊川橋梁

山田線大槌川橋梁。一部の下部工にはシートパイル基礎を採用

 2018年度内の開業を目指し、今後さらに工事が本格化してくるのが、復旧延長が55.4㎞に及ぶ山田線宮古~釜石間だ。鉄建の担当工区では、橋台や橋脚などの工事が進められている。この地域の河川は、サケの遡上(そじょう)やアユの放流が行われる清流で、施工上の制約も多い。山田線は復旧工事完了後、三陸鉄道に移管される。

国道45号気仙トンネル

 鉄道以外では現在、復興道路に位置付けられている国道45号三陸沿岸道路の気仙トンネル工事を施工中。既にトンネル掘削は予定通り終えており、明かり部や路盤の工事などを進めている段階だ。

海抜20メートルの高台に移転新築中の赤崎中学校

 岩手県大船渡市では、いまだ仮校舎での運営を余儀なくされている赤崎中学校の移転改築工事を急いでいる。土地造成の影響で本体着工が遅れたが、年度内には安全な高台に建つ強固な新校舎が竣工する予定だ。
 菅原次長は「ゼネコンの中で鉄道に一番詳しいのが鉄建。われわれと一緒になって、しっかり議論できる体制が整っており、とても信頼している。今後も総合力を発揮し、地域の発展と復興に寄与していただきたい」とエールを送る。
 視察を終えて林社長は、「東日本大震災からの復興のため、全国から人を集めて必死の体制で臨んできた。現場も相当苦労したが、被災された方々はそれ以上に大変で、一刻も早く復興を成し遂げなければならない。鉄道の復興はまだ道半ば。今後もJRの信頼に応えるべく、早期の完成へ努力していく」と決意を新たにした。
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