2016/11/25

【土木学会】市民普請大賞グランプリは「別所砂留を守る会」 住民主体の活動を評価


 土木学会(田代民治会長)は23日、東京都新宿区の土木会館で土木の日関連行事のシンポジウムを開いた。「市民普請大賞2016」の1次選考を通過した6団体などの活動発表と講評が行われ、最終審査の結果、グランプリに別所砂留を守る会(広島県)の「別所砂留の整備保存および啓蒙活動」が選ばれた。地域住民が中心となった整備保存や見学会の開催、砂留を活用した地域活性化への取り組みなどが高く評価された。

 各受賞者への表彰状贈呈後、田代会長は「皆さんの活動を通じて安全・安心な暮らしは土木が支えているということに対する理解を得ていきたい。そうしないと土木を志す若者や担い手がいなくなる。誰かがやっていかなくてはならないということを地道に訴えていきたい。皆さんに勇気をもらった」とあいさつした。
 シンポジウムは市民普請大賞候補団体の活動発表、全体討議、最終審査と毎年恒例の「土木偉人映像展」で構成。活動発表では応募があった16件のうち、1次審査を通過した6団体と特別発表のやまかわさとみ事務所(愛知県)がそれぞれの取り組みを説明した。
 市民普請大賞は土木学会の創立100周年を記念して2014年に創設し、今回が2回目となる。活動発表に先立ってあいさつした選考委員の島谷幸宏九大大学院教授は、「土木が国民の目線から離れてきているという思いもあって始めた」と、“市民のため”という土木の本質を再確認することが制度創設のきっかけになったことを説明した。
 土木学会の土木広報戦略会議土木の日実行担当を務める五道仁実国土交通省官房技術審議官は、「建設業は他産業に比べて特に担い手が不足している。市民普請大賞で土木に対する理解を広めることで、多くの若者の入職につながると思っている。シンポジウムを通じて、これからの社会資本整備、経済発展、安全な国土形成を支える土木技術者の願いが根付くことを期待している」とあいさつした。

 各賞の受賞団体は次のとおり。
 〈準グランプリ〉北川かっぱの会(東京都)=市民提案による北川の自然護岸化と粗石付双斜曲面式魚道の設置▽建設コンサルタンツ協会九州支部夢アイデア部会(福岡県)=市民アイデアから生まれた“ヤギ・羊等の小型家畜を用いた除草モデルの確立”。
 〈選考委員長特別賞〉植村建設(北海道)=地域の安全・安心「安全の駅」の整備と、市民防災体験会の開催継続と緊急災害における実践。
 〈特別賞〉やまかわさとみ事務所(愛知県)=やまかわさとみの体験作文・新作狂言。
 〈優秀賞〉NPO法人がんばりよるよ星野村(福岡県)=日本の棚田百選「広内・上原地区棚田」復興に向けて▽上西郷川日本一の郷川をめざす会(同)=上西郷川における市民普請~日本一の郷川に向けた川づくり。

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