2016/11/15

【現場最前線】全員のスクラムが急峻地山を制す! 釜石線小佐野・釜石間釜石中央ICこ線橋他新設工事


 東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市。2019年ラグビーワールドカップの開催地に選ばれた同市で、東日本旅客鉄道(JR東日本)東北工事事務所発注の釜石線小佐野・釜石間釜石中央ICこ線橋他新設工事が進められている。施工は佐藤工業。現場では牧野總所長を“司令塔”に、工事関係者全員が“スクラム”を組み、地域の1日も早い復興に向けて誠心誠意の施工を展開している。
 同工事は、国土交通省東北地方整備局がJR釜石線に近接する個所をJR東日本に委託、三陸沿岸道路(釜石山田道路)釜石中央インターチェンジ(IC)のJR釜石線交差部にこ線橋を新設する。現在、先行工事として、橋台構築個所の斜面の切り取り掘削、法面工などを行っている。
 牧野所長が同工事の「最大のポイント」と位置付けるのがJR釜石線と国道283号の近接部分だ。高さ約35m、勾配が50度にもなる急峻な地山で森林の伐採工や切り取り掘削などの作業を行う中、線路や国道に落下物があれば、一般市民を含めた大事故につながりかねない。
 JR営業線と国道利用者、さらに工事関係者全員の安全を一手に引き受けながら工事を進めるには“視野の広さ”が要求される。
 そこで、牧野所長はJRと相談しハード・ソフト両面での対策を講じた。ハード面は大型土のうや落石防止ネット、落石緩衝柵などを設置。ソフト面では隣接駅発車10分前に切り取り掘削作業を中止し、近接線付近に監視人を配置している。現場の安全を確認しながらも一般市民への安全を怠らない多重の対策が無事故・無災害の継続につながっている。
 一方、“現場は生き物”と称されるように、必ずしも計画どおりにはいかないこともある。

法面のモルタル吹きつけ

 地山で切り取り掘削を行う時は、バックホウが移動しながら掘削するための登坂路を設けるのが一般的だが、この現場では掘削する奥行きが狭いほか、山肌が脆かったため、上段部分に登板路を設置できなかった。
 工程について「他社も近くで作業する狭い現場であるため、並行作業ができない。工程の1つひとつがクリティカルで、1つの作業の遅れが全体工程に影響を与えてしまう」(牧野所長)と言う。
 安全性を確保しつつ、工程への影響を最小限にとどめる方法--。牧野所長が長年の経験で培ってきた知識とノウハウから導き出した答えが“高所機械掘削施工工法”の導入だ。同工法はワイヤーを巻き付ける立ち木の強度を確認した上で、ロッククライミングマシン1台当たり2本のワイヤーで吊るしながら作業する。
  この工法を採用したことで急峻な地山での切り土工が成立し、工程への影響を最小限に抑えられた。加えて、クローラー部分が地山の角度に合わせて調節できるため、運転席を常に水平に保ちながら安全な掘削が可能となった。

3次元施工図モデル

 こういった対策を具体化できる1つの理由に、3次元の施工図モデルの活用がある。施工計画の作成、新規入場者の教育で工事全体のイメージをつかませている。同モデルを活用したことで、作業員のミスが減少している。また、月に1回関係者全員で行う工程会議にも使用され、進捗管理や問題点の解決にも一役買っているようだ。
 2017年2月からは、同工事のメインとなる橋台構築が始まる。冬季での厳しい作業が予想される中、「コンクリートの所定品質を確保するため寒中コンクリートとして管理し、シートで覆うのはもちろんのこと、ジェットヒーターを使用して給熱養生を施す」(同所長)と既に先の展開を見据えている。

牧野總所長

 今後、完成に向けて「無事故・無災害を目標に、必要であれば設備、人的要員、教育も含めて検討し、現場関係者全員の安全意識を高めていきたい」(同所長)と力強く語った。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【現場最前線】親子分離シールド機で施工中 東大島幹線・南大島幹線その2 子シールドマシンの内部 鹿島が、東京都江東区、江戸川区で進めている「東大島幹線及び南大島幹線その2工事」の現場を公開した。工事は両区の雨水を収容する雨水幹線の築造工事。東京都下水道局が発注した。径が異なるトンネルをつくるため、親機に子機を内蔵させた「親子シールドマシン」を採用し、小松川第二ポンプ所から、大島5丁目までの計約1.5㎞を掘削する。現在は約1.1㎞まで工事が進んでいる。 ここで親子が分離した 2012年5月から東大島幹線(… Read More
  • 【現場最前線】5.5㎞の超長距離シールドが到達 横浜環状北線 子安台に到達したシールド機 10月29日、直径12.49mの巨大シールド機が、横浜市神奈川区の子安台換気所に到達した。掘進距離は5.5㎞。超長距離掘進を終え、横浜環状北線の外回り(生麦方面)シールドトンネルが到達した瞬間だ。2010年末に発進したシールド機は、東日本大震災を乗り越え、約70万m3もの掘削土砂を処理しながら役目を終えた。現在、内回りトンネルも掘進を進めており、2014年春には到達する予定だ。着々と進む横浜環状北線シールドトンネ… Read More
  • 【現場最前線】土木現場に3次元モデル さがみ縦貫相模川橋上部工事 大林組が施工する相模原市の「さがみ縦貫相模川橋上部工事」で、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)が現場運営に効果を発揮している。橋の中央径間は長さ150mに達し、左右のバランスを取りながらPC(プレストレストコンクリート)を張り出す難しさに加え、錯そうする桁端部の配筋にも緻密な施工が求められる。大賀猛所長は「事前の作業確認に3次元モデルが有効に作用している」と、CIM導入の効果を口にする。 ◇本社からの要請  … Read More
  • 【現場最前線】34時間で東海道と横須賀線を切換! JR東日本の品川駅改良 東日本旅客鉄道(JR東日本)は、品川駅改良第3回線路切換工事を実施した。東京工事事務所から受注した東鉄工業が施工し、11月22日終電後から24日午前10時20分ごろまで、一部電車を運休し、約34時間かけて線路切換工事を計画どおり終えた。 線路切換では、新車両基地(電留線ほか25線、軌道延長約15㎞)の使用を開始し、現車両基地(旧田町車両センター)を廃止。車両基地東京方で、分岐器1組を撤去し、新車両基地と東海道上り線を接続した。  品川駅横浜方… Read More
  • 【山手線】始発までに設置 目白駅にホームドアが完成 東日本旅客鉄道(JR東日本)東京支社が発注、東鉄工業が施工した山手線・目白駅ホームドアが供用開始した=写真。JR東日本が安全対策の一環で進めている山手線のホームドアは全29駅のうち、恵比須など8駅で使用開始(10月末現在)。東鉄工業では目黒、大崎、駒込駅に続き今回で4件目の受注となる。  ホーム構造は、盛土式と桁式が半々で、桁式部は既設のPC版を削孔し、鋼製プレートを固定した後、ドア設備を設置した。盛土式は、ホームの地中に杭を約2.5m間隔で… Read More

0 コメント :

コメントを投稿