2015/08/27

【復興特別版】石巻市、陸前高田市に国営「追悼と鎮魂の場」 記憶と教訓を発信

宮城、岩手両県で最大の被災地となった石巻市と陸前高田市に設置される国営追悼・祈念施設と復興祈念公園(ともに仮称)。未曾有の広域・複合災害による犠牲者への追悼と鎮魂、震災の記憶と教訓の後世への伝承、国内外に向けた復興に対する強い意志の発信を目的に、被災自治体が整備する公園の中に国が中核的施設となる丘や広場などを設置する。写真は石巻市南浜地区復興祈念公園の計画地。

■宮城県石巻市 歴史風土の「浜」とかつての「街」尊重、旧北上川と一体空間も
 基本計画によると、宮城県では地震、津波、火災、さらに地盤沈下と複合的な被害を受けた石巻市南浜地区に整備する。空間構成の考え方として、集落の成り立ちの歴史や風土を示すかつての「浜」と、震災前に蓄積された住宅地としての半世紀の想いや記憶を示す「街」を土地利用の基本的前提とし、祈念公園としての機能をそれぞれ尊重することが重要だとしている。
 具体的な空間構成では、公園の中心部(南浜2丁目、3丁目付近)に、追悼と鎮魂のための式典や教訓の伝承活動、復興への強い意志の発信が可能な中核的空間となる国営追悼・祈念施設を整備。これと連携して市が環境学習、運動やレクリエーション活動、イベントなど多様な市民活動の拠点となる空間を整備する。またかつて街の暮らしがあった記憶を実感できる空間としても位置付ける。
 場所性を踏まえた空間のあり方として、震災後にかつての湿地環境が表出している敷地南側に、生物の生息空間や雨水調整機能を持った湿地・池沼を面的に整備するほか、湛水を許容する土地利用を検討。街が失われたことを残すため、骨格的な街路を幹線園路として残すとともに、サインの工夫などによってかつての町丁目が分かるようにし、公園全体で震災の実情と教訓の伝承ができる場とする。
 南浜1丁目の区域には県が避難築山やメーン駐車場を設置し、来訪者や利用者の安全を確保するための防災公園とする。
 また、この公園は、市が構想する「いしのまき水辺の緑プロムナード計画」において重要な場所であり、国土交通省が実施する「旧北上川河口かわまちづくり」と連携して進める必要があることに加え、近接する旧北上川沿いに市が防災マリーナの設置を検討していることから、公園の旧北上川側は川と一体となったエントランス空間とする。公園の海側は市街化する以前から存在し、人々の記憶にも残る松原の再生を図る。

■岩手県陸前高田市 震災遺構つなぎ“円弧”上に築山、「一本松」周辺に中核施設

高田松原津波復興祈念公園の計画地
一方、岩手県陸前高田市では、高田松原津波復興祈念公園として、県が都市計画決定した公園区域に加え、今後土地区画整理事業と調整を図りながら拡張を予定する約130haの範囲を計画区域とし、公園の利活用・空間イメージには、▽震災への想いと追悼・鎮魂▽未来への展望▽かつての郷土の風景の継承▽人とまちの安全の確保--を挙げた。
 中核的空間となる追悼・鎮魂の場(国営追悼・祈念施設)は、復興への希望の象徴となっている「奇跡の一本松」周辺に整備する。
 具体的な空間要素として、道の駅のにぎわいある日常空間と、静謐(ひつ)な追悼・鎮魂の祈りの空間を仕切るため、3つの震災遺構(タピック45、下宿定住促進住宅、気仙中学校)をつなぎ、広田湾を包む“円弧”上に、帯状の築山を設置する。天端部分には氷上山など郷土の山並みや復興する高田、今泉の市街地を展望できる場も設置する。
 「祈りの場」は、周辺の自然環境に包まれ、海への展望が開かれる静謐な広場空間を形成する。また追悼とともに逍遙できる空間を確保する。
 震災の実情や教訓を伝承するための空間として、震災遺構のタピック45を拠点とし、隣接して市が重点道の駅「高田松原」と一体的に震災津波伝承施設・休憩所を整備する。さらに「奇跡の一本松」を多くの人が訪れることができ、復興関連イベントも開催できる空間を確保する。
 かつての名勝、高田松原の復旧・再生にも取り組む。養浜のほか、保安林事業として、長さ約1350m、最大幅約90mで植栽し松原を再生する。古川沼も再生整備する。
 このほか、地震発生時に安全に避難できるよう避難路とともに避難誘導のための情報提供施設を設置。また防潮堤や保安林などと一体となって津波の被害を軽減する役割も持たせる。
 国営施設の基本設計は、石巻がドーコン・愛植物設計事務所JV、陸前高田はプレック研究所でそれぞれ担当しており、2015年度内に完了させる。ともに16年度に着工し、20年度から段階的に供用を開始する予定だ。
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