「樹脂や繊維など化学系分野のメーカーから着目され始めた」と、木材用不燃液を販売するSOUFA(東京都中央区)の中原健太氏は手応えを口にする。製品の『SOUFA』(ソウファ)は無色透明で臭いもなく、人体の影響もほとんどないホウ素系水溶液。特殊な製法で高濃度化を実現し、不燃化や防蟻用として木材の加工会社や工務店に月2t程度を販売する。別素材への活用をにらみ、溶液のパウダー化に成功したことで、関心が高まった。
ホウ素系水溶液は、これまでも木材の不燃化に使われるケースはあったが、成分のホウ酸が水に溶けにくいため、濃度4-6%が限界であった。金沢工業大学の露本伊佐男教授がポリホウ酸ナトリウムをベースに特殊な製法でホウ酸イオンを合わせ、有効成分の割合を引き上げることに成功し、利用価値が拡大した。溶解度が大きくなり、木材や紙を漬けておくだけで不燃化できるようになった。
販売に乗り出したのは2010年4月。当初は水溶液濃度を16%に設定していたこともあり、人体への影響がほとんどない点が着目され、不燃よりも防蟻対策用に使われてきた。その後、濃度を23%まで引き上げたことで、木材の不燃化に対応しやすくなった。
「国土交通省の不燃材料認定レベルもクリアできた」と、共同事業者でもあるアベ・ホーム(埼玉県狭山市)の古屋正樹社長は強調する。製品の効果をアピールする目的もあり、自らの工場で濃度23%の溶液を使った不燃木材を生産し、現在は第三者認定機関に申請中。許可が下り次第、23%溶液を木材加工メーカーに売り込む計画だ。
国交省が大臣認定を取得した不燃木材のサンプル調査を公表したのは11年6月。不燃材には建築物内部の火災拡大や煙の発生を20分間抑制する性能が求められるが、調査対象となった10製品中で9製品が性能を発揮できない異例の事態が明るみになった。「それ以降、認定自体が厳しくなっている」(古屋氏)。通常は木材に圧力をかけて溶液を染みこませるが、同社は振動を与えた木材が元の状態に戻ろうとする際に液を吸収する原理で不燃化する。
木材以外の分野から反響が上がり始めたのは4月に入ってからだ。問い合わせは、ここ3カ月余りで約80社に達し、このうち20社程度のメーカーにサンプルを提供した。「溶液をパウダー化したことが話題になっている」と中原氏は明かす。パウダー化は溶液にホウ砂を加え、一定の温度で混ぜ合わせた後に水分を飛ばす方法で実現したが、まだ製造設備が整っていないため、量産はできない。
既に複数の製品メーカーでは具体の研究もスタートした。そもそもプラスチックを燃えにくくする難燃剤は存在するが、酸化アンチモンやハロゲンなど環境保全に問題のある成分が主流となっている。ソウファから作成したパウダーであればそうした課題もクリアでき、従来品と同様に難燃性をも付与できる可能性は高い。火の付きにくいポリ塩化ビニルの代替品としても期待されている。
ただ、水と相反する油成分の素材にどこまで適用できるかは未知数。中原氏は「断熱材や電線カバーなどターゲット分野は幅広い」と期待を寄せている。木材用不燃液としては、特急電車のテーブルや肘掛けなどの木質部位に採用され、建築物以外の分野にも活用の幅を広げているだけに、パウダー化による別素材への導入にかける思いは大きい。
23%濃度水溶液の価格は20㎏当たり5万2000円。製造設備が整っていないこともあり、パウダー価格はまだ決まっていない。どこまで価格帯を引き下げることができるかが、別素材への活用にも影響を及ぼしそうだ。問い合わせはソウファ西東京事務所・電話042-513-5239。
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ホウ素系水溶液は、これまでも木材の不燃化に使われるケースはあったが、成分のホウ酸が水に溶けにくいため、濃度4-6%が限界であった。金沢工業大学の露本伊佐男教授がポリホウ酸ナトリウムをベースに特殊な製法でホウ酸イオンを合わせ、有効成分の割合を引き上げることに成功し、利用価値が拡大した。溶解度が大きくなり、木材や紙を漬けておくだけで不燃化できるようになった。
不燃液『SOUFA』(ソウファ) |
「国土交通省の不燃材料認定レベルもクリアできた」と、共同事業者でもあるアベ・ホーム(埼玉県狭山市)の古屋正樹社長は強調する。製品の効果をアピールする目的もあり、自らの工場で濃度23%の溶液を使った不燃木材を生産し、現在は第三者認定機関に申請中。許可が下り次第、23%溶液を木材加工メーカーに売り込む計画だ。
木材に振動を与え、溶液を染みこませる |
木材以外の分野から反響が上がり始めたのは4月に入ってからだ。問い合わせは、ここ3カ月余りで約80社に達し、このうち20社程度のメーカーにサンプルを提供した。「溶液をパウダー化したことが話題になっている」と中原氏は明かす。パウダー化は溶液にホウ砂を加え、一定の温度で混ぜ合わせた後に水分を飛ばす方法で実現したが、まだ製造設備が整っていないため、量産はできない。
既に複数の製品メーカーでは具体の研究もスタートした。そもそもプラスチックを燃えにくくする難燃剤は存在するが、酸化アンチモンやハロゲンなど環境保全に問題のある成分が主流となっている。ソウファから作成したパウダーであればそうした課題もクリアでき、従来品と同様に難燃性をも付与できる可能性は高い。火の付きにくいポリ塩化ビニルの代替品としても期待されている。
ただ、水と相反する油成分の素材にどこまで適用できるかは未知数。中原氏は「断熱材や電線カバーなどターゲット分野は幅広い」と期待を寄せている。木材用不燃液としては、特急電車のテーブルや肘掛けなどの木質部位に採用され、建築物以外の分野にも活用の幅を広げているだけに、パウダー化による別素材への導入にかける思いは大きい。
23%濃度水溶液の価格は20㎏当たり5万2000円。製造設備が整っていないこともあり、パウダー価格はまだ決まっていない。どこまで価格帯を引き下げることができるかが、別素材への活用にも影響を及ぼしそうだ。問い合わせはソウファ西東京事務所・電話042-513-5239。
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