2015/05/23

【現場最前線】ベント架設+横取降下で迅速架設! 希望の架け橋・新北上大橋災害復旧工事

東北地方最大の流域面積を誇り、宮城県石巻市で太平洋に注ぐ北上川。追波(おっぱ)湾の最も河口側にあるのが、宮城県が管理する国道398号新北上大橋だ。地域のシンボルとして親しまれた7径間565mの雄大なトラス橋は、震災の津波で、左岸側2径間が流出。この落橋で上流の国道45号飯野川橋まで約23㎞の迂回走行を強いられ、救命や救援に著しい支障を来たした。地域の生活と交流に加え、沿岸部の“大動脈”として、復興を支える希望の架け橋・新北上大橋災害復旧工事が“橋梁のプロフェッショナル集団”である川田工業(寺島太郎作業所長)の施工で進められている。

 1976年12月に供用した新北上大橋は、長さ565.7m、幅10.2mの2+2+3径間下路式鋼トラス橋。震災の津波は河口から4㎞ほど離れた橋を飲み込み、大川小学校を始め、周辺一帯に大きな被害を与えた。新北上大橋自体も左岸側の2径間が約800m上流まで押し流された。
 応急用仮橋で通行可能となったのは震災から約半年後の11年10月。生活道路に加え、沿岸部の交通の要所として、復旧・復興関連車両などで通行量は日を追うごとに大幅に増えている。

寺島太郎作業所長(川田工業)
復旧工事の現場を率いる寺島作業所長は、鋼製ランガー橋で国内最大級のアーチ支間長を持つ国道45号槇木沢橋耐震補強工事(岩手県田野畑村)や同登米志津川道路上部工工事(宮城県登米市、南三陸町)など、震災前から東北地方で橋梁の補修や新設に携わってきたエキスパートだ。「震災の復旧・復興工事の中でも象徴的な事業といえるこの工事に参画できたことに感謝したい」と自らを奮い立たせる。
 復旧工事は、14年12月に本格着工した。落橋した2径間のうち、A1橋台からP1橋脚までの1径間(長さ77.5m)はことし3月に架設を完了し、仮設材の撤去と塗装工事を進めている。6月から9月までの出水期は作業が制限されるため、新設部分の床版工や既設部の補修を行い、残る1径間(P1-P2間)の架設開始に向け、非出水期となることし10月以降にベント杭基礎や架設作業に着手する予定だ。時期はこれから協議して決めるが、「架替作業をできるだけ短期間で完了させる工夫を施し、地域への影響を最小限に抑えたい」と力を込める。
 P1-P2間は、クローラクレーンによる“ベント架設+横取降下工法”で行う。「当初計画されていた工法では、長期間の全面通行止め期間が必要だった」が、仮橋脚と横取設備を一体化させたベント設備を提案。同社の富山工場(富山県南砺市)で製作したトラス部材を橋の上流側に設置した構台で組み立て、あらかじめ床版も施工しておくことで、全面通行止め期間を最小限に短縮させるという。
 床版まで施工したトラスは、重さは約1000tにもなる。このため、施工時の安定性確保や降下作業時間の短縮などのリスク低減が重要になる。横取とジャッキダウン量が最少となる設備を検討するとともに、中間ベントの基礎杭本数を削減させるため、ベント構造も改良する予定だ。

左側が新設、右は既設部分
一方、津波に耐えて残った右岸側5径間も補修や補強が必要なため、歩道部の床版工、ボルトの補修、塗装の塗り替え、橋台・橋脚の断面の補修などを進めている。
 現場周辺は、冬季から5月にかけて強風の日が多く、架設や補修には高所作業が伴うだけに「墜落防止と重機災害への対策が最重点課題」となる。フルハーネス型安全帯の使用を徹底させつつ、作業員一人ひとりが作業手順を理解するまで周知を行う。「近くに目標を設定した方が伝わりやすい」と、安全目標時間を5000時間ごとに区切って設定するなどの対策も奏功し、着工以来、2万6000時間余りを無事故・無災害を継続している。 
 作業員は1日平均20人程度。昼夜間施工となる最盛期には約30-40人が現場に入る予定だ。特殊な工種が多いため、架設は岩手、杭打ちは秋田と、県外からも作業員を確保している。「作業環境の影響で設置できるクレーンの台数が限られる中、工種をうまく組み合わせて、円滑に現場を動かしていきたい」とこれから迎える最盛期に備え、「発注者である宮城県と、会社のバックアップを受けながら、早期の車両通行を目指し、安全・品質の両輪を無事故・無災害で完了できるように現場一丸で貢献していきたい」と力強く語る。
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