2016/08/12

【記者座談会】好評の夏休み現場見学会、将来の就職先に選ばれるためには

A 学生も夏休みに入り、恒例の現場見学会が各所で開かれているね。
B ゼネコンや各団体は、建設業の仕事をPRできる絶好の機会として現場や技術研究所の見学会を企画している。参加者も夏の自由研究の題材になるということで、人気は高い。交通の便が良い東京都内の見学会などは、すぐに定員に達してしまうそうだ。
C 将来的な労働力不足が見込まれる中、担い手確保策の一環として、見学会に力を入れるゼネコンも多い。見学会開始のあいさつでは、「将来はわが社に入社してもらえれば」というフレーズが定番になっている。
A 単に現場を見て回るだけでなく、実際の作業を疑似体験できる企画を取り入れた見学会も増えている。ここ数年は女性の活躍にスポットを当てた見学会も多いみたいだけど。
C 代表的なのは日本建設業連合会が2015年に続いて16年も実施している「けんせつ小町活躍現場見学会」だ。予定している現場数も15カ所と多い。女子小中学生とその保護者に現場での女性活躍をアピールすることで、将来の就職先として建設業を選択肢の1つに加えてもらうのが狙いだ。ことしは協力要請に対して約50現場から手が挙がったという。各社とも協力的で、業界を挙げて現場での女性活躍を積極的にPRするという考えが定着している。
A 実際に現場を取材した感想はどうかな。
B 取材した現場の1つは建築だったので直射日光を避けることができたが、遮へい物が周りにない都内の土木現場での取材はかなりきつかった。炎天下の中、現場ではゼネコンの社員を始め、作業員も参加者に嫌な顔一つ見せず、丁寧に対応する姿が印象的だった。いずれの現場でも参加者の反応は上々で、大いに楽しんでいるようだった。
C 現場見学は、普段見ることができない工事の最前線でスケール感やものづくりの醍醐味を味わえる貴重な機会だけど、世間が建設業に抱くイメージは必ずしも好意的でないのも事実だ。設計労務単価の引き上げなど処遇改善の動きも加速しているが、長らく定着してきた「3K(危険、きつい、汚い)」職場というイメージは未だに払拭しきれていない。
D 道路舗装会社が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立入検査を受けたり、基礎杭工事の施工データ流用、空港の地盤改良工事での不正など、最近はネガティブな問題が立て続けに起こっているのも、建設業界のイメージダウンに大きな影響を及ぼしている。
B 建設業への就職は、一昔前に比べて親の意向が大きな要素を占めるといわれる。ネガティブな情報ばかりがクローズアップされれば当然、親の心象は悪くなる。危険できつく、イメージも悪い仕事に、あえてわが子を就職させたいと考える親は少ないだろう。
D 見学会を通じて現場で懸命に働くゼネコン職員や作業員の姿が、保護者の理解促進につながれば良いが、せっかくの努力がイメージの悪化で水泡に帰してしまっては、元も子もない。
A 準備にかかるコストや工期への影響、安全対策面などを考えると現場にとって、見学会は必ずしもメリットがあるとは言えない。担い手の確保に向けた1つの「未来への投資」が無駄にならないよう、業界全体が気を引き締めていかなければならない。
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