2017/02/03

【記者座談会】告示15号見直しで設計者の地位向上なるか/36協定見直しの影響は?


A 建築設計・工事監理等の業務報酬基準を示す国土交通省告示15号の見直しに向けた議論が、2017年度からいよいよ始まる。

B 建築設計界にとって目下の最大関心事だろう。現行の告示が施行されてから8年が経過し、実際の業務実態との乖離(かいり)があると指摘する声は、組織の大小を問わず聞かれていたからね。
C 建物の大規模化が進んでいることに加え、公共施設の統廃合や複合化の流れが加速しており、従来の用途区分を単純に適用できないケースも増えてきている。また、機能の高度化がより求められ設計などに付随する業務が増大していることもある。
B 言い換えれば標準的なビルディングタイプではない、個別の解が設計者には求められているということだ。それだけに初期段階の重要性が高まり、設計業務のフロントローディング傾向が顕著になりつつある。ただし初期段階での業務報酬額比率は概して低い。労多くして益少なしとの思いもあるのでは。
C 地方自治体では建築系の技術職員不足が顕在化しているだけに、発注者支援やPM(プロジェクト・マネジメント)、CM(コンストラクション・マネジメント)などのマネジメント業務をどうとらえていくかという視点も必要だ。
B いずれにしても、実際に行われている業務実態をいかに適切に把握していくかが議論の大前提となる。今後、個別企業や設計団体などへのアンケート、ヒアリングなども行われることになるだろう。
C 今回の見直し議論を通じて建築設計や工事監理の業務内容を社会に対して明らかにし、その役割と権限を明確に示していくことを期待したい。実態に即した適切な業務報酬による処遇改善にとどまらず、設計者の社会的地位の向上にもつながるのではないか。

■働き方改革を見据え休日拡大へ加速
A ところで、政府は働き方改革の推進に向けて、残業時間の上限抑制に向けた調整に入った。青天井の残業が事実上可能な労使間の「36(サブロク)協定」を見直し、ほぼ全業種を対象に上限を設定するようだ。
D これは建設業界にとって非常に影響が大きい。これまで残業時間規制対象外の建設、運輸も猶予期間を設けた上で新しい規制を適用する見通しだからだ。政府が本腰を入れる中、建設産業界も否応なしに新たな対応が求められることになる。
E 建設業は他産業に比べ労働者の高齢化が深刻な課題になっていた。このままの状況が続けば、25年までに現在約330万人いる技能労働者のうち、120万人の離職が見込まれるという試算もある。労働者不足により、将来的に建設業の生産体制を維持していくことが困難になる可能性もある。処遇改善による担い手確保は建設業全体にとって喫緊の課題だ。
A 日本建設業連合会は、活動の最重要課題として処遇改善による「担い手確保」、「生産性の向上」による省人化を掲げている。担い手の確保、生産性向上を将来の魅力ある建設業を実現するための車の両輪として精力的に取り組んでいる。
E 日建連の中村満義会長は、1月26日に開いた新春懇談会で社会保険や建設キャリアアップシステムに加え、現場の4週8休に積極的に取り組んでいく考えを示した。
D 一品受注生産、現地屋外生産、労働集約型生産という特性がある建設業で休日の拡大は難しい面もあるが、懇談会では会長の「決意表明」を歓迎する声も多く聞かれた。
A 働き方改革の本格展開を見据えて、ことしは休日拡大に向けた業界団体の動きが一層加速しそうだ。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【記者座談会】公共工事請負額の減少続く地方建設業界 「地域の町医者」にカギ A 参議院選挙は、建設産業界職域代表の足立敏之さんが上位当選を果たした。業界の関心事は、経済対策と公共事業予算に移っている。 B 選挙後、全国建設業協会の各建設業協会トップの顔は一様に明るかった。建設業界の声が票の数につながったことに、安堵していたのだと思う。しかし、建協トップの人たちも、仕事量となると顔を曇らせている。特に地方の会員企業の多くは、公共土木中心だけど、地元建設業が受注できる仕事量の減少に強い危機感を持っている。C 対照的に全… Read More
  • 【記者座談会】参院選・足立敏之氏が上位当選 “未来への成長につながる”経済対策は? A 10日の参議院選挙で、自民党職域代表の足立敏之氏が上位当選した。この結果をどう見るか。 B 近年、建設産業界職域代表の獲得票が低下傾向にあったことを考えれば、今回が29万票を超えたことに正直驚いた。「建設産業再生」を掲げ職域代表として立候補した足立さんの獲得票数が大きく伸びたことは、建設産業界の声を代弁する足立さんと、支持する建設産業界の存在感をこれまで以上に示す結果となった。C ここ数回の参議院選挙の中で建設業の職域代表としては最も多… Read More
  • 【記者座談会】好評の夏休み現場見学会、将来の就職先に選ばれるためには A 学生も夏休みに入り、恒例の現場見学会が各所で開かれているね。 B ゼネコンや各団体は、建設業の仕事をPRできる絶好の機会として現場や技術研究所の見学会を企画している。参加者も夏の自由研究の題材になるということで、人気は高い。交通の便が良い東京都内の見学会などは、すぐに定員に達してしまうそうだ。C 将来的な労働力不足が見込まれる中、担い手確保策の一環として、見学会に力を入れるゼネコンも多い。見学会開始のあいさつでは、「将来はわが社に入社し… Read More
  • 【記者座談会】「秋枯れ」対策、補正予算に期待 道路メンテは相当量の発注、 今後も増加か A 参議院選挙も終わり、建設業界の最大の注目は2016年度第2次補正予算に移っているけど、具体的な動きも出始めているね。写真は細田博之自民党幹事長に要望書を手渡す全国建設業協会の近藤晴貞会長(右から6人目) B 公共事業予算の上期8割執行による「秋枯れ」対策として、安倍晋三首相が指示した経済対策の取りまとめが7月内に迫る中、公共事業関係費がどの程度盛り込まれるのかが最大の関心事だ。A 20日には、国土交通省が自民党の国土交通部会に経済対策の… Read More
  • 【記者座談会】小池都政がスタート 2020年東京五輪に向け新知事の舵取りは A 東京都知事選で圧勝した小池百合子氏が2日に初登庁したね。B 初登庁時の段取りがぎりぎりまで決まらず、スケジュールが発表されたのは前日の夕方だった。当日は取材場所の位置取りで早朝からマスコミが詰め掛け、久しぶりに都庁が活気に満ちていた。 C 都知事20代目にして初の女性首長が誕生した。元都知事が揶揄(やゆ)していたようだが、実際に初登庁した姿を見ると、華やかの一言。2020年東京五輪に向けた今後のイベントを考えると、男性に比べて確実に見栄… Read More

0 コメント :

コメントを投稿